【第六章の人々】
速ハヤ総ブサ別ワケノ王ミコ・女メ鳥ドリノ王ミコ
オホサザキの命で殺された悲恋の物語の主人公
ハヤブサワケはホムダワケ（応神天皇）の皇子で、別名は隼総別皇子。オホサザキ（仁
徳天皇）はメドリを妃にしようと、弟のハヤブサワケを遣いに立てる。ところが、メドリ
はハヤブサワケを気に入り、ふたりは愛し合ってしまった。オホサザキを侮り、ハヤブサ
ワケの反乱を思わせるメドリの歌を知ったオホサザキは、軍を発して、ふたりを殺害した
という。
この話には、ハヤブサとサザキ（ミソサザイのことで、仁徳天皇の諱いみなはオホサザ
キ）が妻にすべくメドリを争うという伝承が原型にあるとされる。また、メドリノミコの
女鳥とは、雌めす雉きじを意味するという説がある。
何よりも、この物語は王権に反した側のふたりに共感を寄せており、メドリを自分の意
志で愛を貫く女性として描いているのが珍しい。
『日本書紀』においては政治的色合いが濃く、ハヤブサワケが進んでメドリを奪い、オホ
サザキに歯向かい続けるという展開を見せている。オホサザキは耐え続けるもついに怒り
を爆発させ、殺害を命じるに至る。
