【第六章の人々】
男ヲ浅アサ津ヅ間マ若ワク子ゴノ宿スク禰ネ（允いん恭ぎよう天皇）
皇后の必死の懇願で即位した第十九代天皇
父にオホサザキ（仁徳天皇）、母にイハノヒメを持つ第十九代天皇で、ヲアサヅマワク
ゴノスクネとは、その諱（天皇としての名ではない名前）である。
兄のミヅハワケ（反正天皇）が崩御すると、群臣たちが集まり誰を皇位に就けるか合議
が持たれた。ミヅハワケの同母弟であるヲアサヅマワクゴノスクネが推挙されたが、彼は
病を理由に何度も辞退する。そこで、妃のオシサカノオホナカツヒメが即位を勧め、よう
やく承知したという。これが允いん恭ぎよう天皇である。
また、『宋そう書じよ』に登場する倭わの五王のうち、「済」にあたるのはこの天皇だ
というのが定説である。『宋書』には、「済」が四四三年に奉献したと記載されており、
五世紀の中頃在位していた王ということになるが、『日本書紀』によれば、当時の天皇は
允恭天皇であり、ここから宋に遣いを送り、四四二年に安東将軍・倭国王という称号を得た
とされている。
ただし、日本の記録には允恭天皇ばかりか、ほかのどの天皇の記録にも遣使に関する記
述は残っていない。
