「キミは、これから成都へ行くのかね?」
「はいおじさま。その通りです。僕は四川省の省都である成都へ行くのです」
「そうか。キミは学生かね? 成都の学校へ通っているのかい?」
「いえ、そうではありません。成都へ行くからって生徒なわけではありませんよ(笑)。僕は観光旅行に来た日本人なのです」
「なに、日本人だったのか! それにしてはそれなりにいろんな中国語を知っているじゃないか」
「そうなのです。僕はいろいろなことを知っているのです。日本では80年代にこんなコーヒーのCMがありました。『さくら剛は知っている……。(ソプラノで)ダバダ~ダ~ダ~ダバダ~ダバダ~ ダバダ~~ダバダ~~ダ~~~~~~』」
「さすが違いのわかる男」
※ここまでの会話、経過時間1.17秒
……ダバダ~?の部分はもちろんおなじみのねつ造会話であるが、それでも他の部分それなりに隣のオジサンと話が噛み合っているのは、だいたい中国人との会話がパターン化して来たからである。
オレが老若男女様々な現地の方々に話しかけられる際、大抵聞かれるのが、「おまえは学生か?」である。「学生」の発音は「シュエション」なので、出会いしなに相手の口から発せられた文章の中に「シュエション」という言葉が含まれていたら、必ずそれは「おまえは学生か?」と聞かれているのである。オレは「学生が休み時間にシュエション(連れション)に行く」、という語呂を考えて見事にこの単語をマスターしたのだ。