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「ままま」
日期:2017-09-06 11:00  点击:720
「ままま」と、私を呼ぶ。
「ま」がひとつ多い。
私を追いかけてくる。おぼつかない足取りで、よたよたと。
あなたは一歳になった。
毎日よく泣き、よく笑う。よく転び、でもきちんと起き上がる。
重い頭をぐらぐらゆらしながら、私にしがみついてくる。
 
「ままま」
お腹がすいた、とあなたは言う。
私はうなずいて、お米をラップに包んでぎゅうぎゅう握る。
あなたの大好きなふりかけを入れるのも忘れない。
おにぎりをこしらえる私の服を、あなたはぎゅうぎゅう握る。
 
「ままま」
いただきます、とあなたは言う。
小さい手を拭いて、おにぎりを口元に持っていく。
ふふふっ、とあなたは笑って思いっきりほおばる。
顔中にお米粒がついても気にしない。
食べる、食べる、食べる。時々麦茶もすする。
 
外はずいぶん雪が降っている。
世界はお米に埋もれたように真っ白だ。
道行く人々が分厚いコートを着込んで白い息を吐く。
私とあなたは、今日はどこへも出かけない。白い雪を見ながら、あなたを膝にのせて、おにぎりをいただく。
「ままま」
お米だらけの柔らかいほっぺをくっつける。
部屋の中はとても温かい。炊きたてのご飯のいい匂いもする。
お米粒をぬぐってあげると、あなたはくすぐったそうにふふふっと笑うので、私もつられてふふふっと笑った。
 
いつかあなたはその足で外の世界に出ていくのだろう。
頭もぐらぐらゆれない。しっかり前を見て、時に泣き、時に笑うのだろう。
真っ白い雪が降っても、照りつける太陽の日でも。
あなたは私の手を離れ、力強く生きてゆくのだろう。
 
そのうち、「ま」がひとつ多いことにあなたは気づく。
「ママ」になって「お母さん」になっても、あなたが私の服を握りしめなくなっても、私は炊きたてのご飯でおにぎりを握ろう。
あなたの大好きなふりかけも忘れない。優しいお米の匂いに鼻をひくひくさせるあなたを見て、一緒にふふふっと笑いながら。

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