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日本むかしばなし集98
日期:2020-01-19 22:31  点击:411
竹の子童子《どうじ》

むかし、三吉《さんきち》というおけやの小僧がいたそうです。
ある日のこと、裏《うら》の竹山でおけのたがにする竹を切っておりました。すると、どこかで、
「小僧、小僧。」
と、よぶものがあります。
「たれだ。たれだい。」
と、いいますと、
「ここだ。ここだい。三ちゃん、ここだよ。」
と、その声がいいます。三吉はそのへんを見まわし、そこか、ここかとさがしましたが、たれもいません。
「ふしぎだなあ。」
と、首をかたむけていますと、
「竹の中だよ。この竹の中だよ。」
と、一本の竹をサワサワゆするものがあります。そこで、三吉は、大急ぎで、その竹をのこぎりで、ゴシゴシゴシゴシひきました。ひきたおしたところが、その竹の中から、小さな子どもが手を出し、頭を出して、やがてすっかり出てきました。五寸《すん》(約一五センチ)ばかりの人間です。それでも、ちゃんと、そこに立って、
「三ちゃん、ありがとう。」
あたりまえの人間の声でいいました。三吉はいよいよびっくりして、どういっていいか、しばらくわからないほどでした。それでも、
「どうして、竹の中なんかにはいっていたのです。」
やっと、そういうと、
「悪い竹の子につかまって、竹の中に入れられてしまったんだ。」
その竹の子どもはいいました。
「しかし、おれが三吉だということ、どうしてわかったんですか。」
三吉がいうと、
「からだは小さくても、世界のことはなんでも知ってるんだ。三吉なんか、生まれない先から知ってるぞう。」
こういったのには、また三吉はびっくりしました。そこで、
「あんたの名は、なんというんです。」
と、聞きますと、
「竹の子童子。」
「では、あんたの年は。」
「千二百三十四歳。」
「へーえ、それで、これから、どこへ行くんですか。」
「天へ帰る。」
「もうすぐ帰るんですか。」
「いや、三ちゃんには恩《おん》になったから、その恩をかえさないでは、天に帰っても、天の神さまにしかられる。」
「それで、おれに恩をかえすといって、どんなことをしてかえすんですか。」
三吉が聞きました。
「それは、三ちゃんのすきなこと、七つまでかなえてやる。」
竹の子童子はいいました。三吉は大喜びしたのですが、それでもいちおう聞いてみました。
「竹の子さん、それほんとうなんでしょうね。うそじゃないでしょうね。」
「ほんとうとも。うそどころか。」
これを聞くと、三吉は目をつぶって、口の中で、
「竹の子、竹の子、さむらいにしておくれ。」
と、三度いってみました。すると、どうでしょう。目をあけてみたら、もうさむらいになって、刀を腰《こし》にさしていました。
「竹の子さん、ありがとう、ありがとう。」
三吉は礼をいって、すぐもう武者修業《むしやしゆぎよう》に出立《しゆつたつ》しました。
あまりうれしかったもので、
「あと六つ、すきなものをいいなさい。」
竹の子童子にいわれても、
「もういいです。これでいいです。」
と、どんどん行ってしまいました。それで、童子はしかたなく、天人になって、空へのぼっていきました。

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