褒め言葉には、人生を変える力がある。 | 人の才能を伸ばす30の褒め方
「何がきっかけで始めるようになったんですか」
HappyLifeStyleを運営していると、この質問を本当によく聞かれます。
一番のきっかけになったシチュエーションを思い出そうとすると「あのときの女の子の褒め言葉」を思い出さずにはいられません。
ある人の、ある褒め言葉が、私を励ましてくれました。
昔に遡って、話をします。
私は高校を卒業した19歳のころ、英語の勉強のためにアメリカにわたり、ロサンゼルスに留学しました。
まだ英語に慣れていない時期だったため、毎日がはらはらどきどきだったことを覚えています。
そのうえ、大学での授業もすべて英語です。
留学当初は語学学校に通い、そこから次に日本で言えば短大にあたる学校へ転入しました。
語学学校のころは、英語が全然分からなくても先生が助けてくれました。
しかし、さすがに普通の短大に入って勉強となると、そうはいきません。
容赦ない英語でどんどん授業が進んでいき、何をやっているのか分かりませんでした。
理解しているふり、分かっているふりで精いっぱいです。
日本人同士のコミュニティーを作り、お互いに情報交換をしていました。
「留学生は日本人とばかりつるんでいる」という留学生を非難する声がありますが、実は私もその1人でした。
1人の力ではかなわないことが分かれば、特別な対策が必要です。
駒を1つでも前に進めるために、日本人同士で固まり情報を交換し合い、宿題やテスト対策をすることは、重要なことでした。
そんなとき、日本人とは関わらない一匹狼の女の子と出会います。
彼女は日本人の団体と交わると英語の勉強ができないとのことで、比較的いつも1人で行動をしていました。
彼女と初めて授業が一緒になったのは、人類学の授業でした。
彼女は一番前の席に1人で座り、私は一番後ろの一番端に座る生徒でした。
説明が理解できず、日本語で授業を受けたとしても、理解できるか分からない授業です。
そんな授業をなぜ私が選択したのかというと、テストの答案が事前に手に入ったからです。
以前に受けた日本人から答案をもらい、事前に内容を暗記しておけばテストで高得点を取れ、パスできる見込みがあったのです。
私は一番後ろの席に座りこそこそしていた学生でしたが、一番前の席にいつも1人で座る日本人女性がいました。
「新居宏子」という、私と同じ年の人でした。
いつも1人で座っていて、どうやら彼女は答案の存在を知らない様子です。
そこで私から話しかけ「答案あるけど、いる?」と話しかけたわけです。
日本語で話されても内容がよく分からない授業に苦しんでいた彼女もさすがに喜んでいました。
それがきっかけで毎週2回ある授業でいつも顔を合わせるようになり、だんだん仲良くなっていきました。
話をしていくと、なんと彼女の住んでいるアパートは、私の家から歩いて10分のところです。
家も近いこともあり、たまに遊びに行ったり、逆に来たりするようになりました。
どんどん仲良くなると、彼女が私についていろいろと気づいたことを言ってくるようになったのです。
当時から私は、哲学的なことを考えていました。
いえ、気づけば小学校のころからずっと考えていたと思います。
「なぜ人間は生まれてきたんだろうか。何のために生きているのだろうか」と子供のころから哲学的なことを考えていました。
いえむしろ、そんなことばかり考えていました。
彼女と仲良くなり、そんな話もするようになると「同じ年なのに、そこまで考えているなんて素晴らしい」と褒めるのです。
私には物心がついたころから、当たり前のようにずっと考え続けてきていることですから、特別なことでもなんでもありません。
人付き合いや恋愛について経験をしてきた分、自分の中で「公式のようなもの(知恵)」ができあがっていたのです。
仲がよくなり、次々と話していくと「なぜそんなこと考えているの。難しいけど分かりやすい」と褒めてくれたのです。
今思えばそのころから私は「自分が考えていることは、実は皆は考えていない」ということに気づき始めました。
なにせ私はずっと当たり前のように考えていることだったため、皆も同じように考えているものだと思っていたのです。
「タカって、本を書きそうだね」
この一言が、HappyLifeStyleの誕生のきっかけになる一言です。
はじめこの一言を聞いたとき「そんなことあるわけないよ」とまったく本気にせず、普通に笑い流していました。
本当にまったく気にしていませんでした。
単純にいい笑い話としか考えていなくて、本気にはしていませんでした。
しかし、彼女は会うたびに、私がする哲学的な話を褒めてくれます。
そんなことを何度も繰り返されると、これが不思議なことにだんだん私に暗示をかけはじめたのです。
繰り返し褒めるということは、だんだん暗示をかけるような不思議な力があります。
「それならちょっと試しに1つ書いてみようかな」
そう思い始め、目の前にあるパソコンでぱちぱち10分くらいでまず1つ書いてみました。
最初の文章は、私を励ましてくれたヒロちゃん宛てに、手紙のような気持ちで書いたものです。
彼女と仲良くなりたくさん話していくと、相談ごとや悩みを打ち明けてくれ始めました。
そのうちに「私ながら、なにか力になることはないかな」と自分の持っている知恵を文章にしてみたのです。
それがHappyLifeStyle、記念すべき第1号の文章です。
(幸せになる方法:第1項「幸せは、気づくだけでいい」)
1つ文章を書くとそれで勢いがつき、まず1冊を仕上げてみます。
「幸せになるための50の方法」というタイトルでできあがり、知り合いの日本人や仲良くなった女の子にも読んでもらいました。
(当時は「幸せになるコツ!」ではなく「幸せになるための50の方法」というタイトルでした」)
すると私が思っていた以上に好評で、なかには「早く次が読みたい」と言ってくれる人もいました。
実際の本人であるヒロちゃんに見せて読んでもらうと……、泣いてくれました。
「そこまで喜んでくれると嬉しいな。もう少し書いてみようかな」
本当に嬉しくて、素直にそう思いました。
それからというもの、今までため込んでいたことを吐き出すかのように、次から次へと書いていました。
今までずっと誰にも話さずため込んでいた分、吐き出すときには洪水のように出てきました。
小さいころから考えていることですから、特に苦はなく、誰かの役に立つためならばと一生懸命に書いてきたのです。
幸いにも、幼いころから書くことが得意でした。
また、分かりやすく説明することも得意だったため、文章を書くために苦労はありませんでした。
次から次へと、本番で書きつづりました。
はじめはプリンターを使って印刷をしていました。
しかし、しだいと規模が大きくなると、紙に印刷する作業が手間になってきました。
そこで得意だったパソコンの知識を使い、ウェブサイトを作って、インターネット上に公開し始めました。
24時間いつでも見てもらえるし、より多くの人の役に立てると思ったからです。
それがもう何年も続き、作品も増え続け、今のHappyLifeStyleがあるわけです。
私は、はじめからこういうことをやろうと思っていたわけではありません。
ある女の子の、ある褒め言葉がきっかけで、ある日、人生が変わってしまいました。
褒め言葉には、人生を変える力があります。
「今思えば、あのときが人生の大きな転機だったな」と痛感します。
今、人と接するときは、できるかぎり褒めるようにしています。
私がそうであったように、ほかの人の背中も押してあげて、人生を変えるお手伝いをしたい気持ちがあるからです。