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十四 バスカーヴィル家の犬(3)

时间: 2023-11-14    进入日语论坛
核心提示:「霧がくるぜ、ワトスン君」「まずいのかい」「うん、とてもまずいんだ。あれが来たら計画はご破算だとは思っていた。サー・ヘン
(单词翻译:双击或拖选)

「霧がくるぜ、ワトスン君」

「まずいのかい」

「うん、とてもまずいんだ。あれが来たら計画はご破算だとは思っていた。サー・ヘン

リーもそんなに遅くなるはずはないんだがな。もう十時だよ。霧が道まで来ないうちに、

彼が出てくるかどうかが、われわれの成否の鍵なんだ。彼の命さえ、それにかかっている

んだ」

 雲ひとつなく晴れ渡った夜であった。星は冷たくきらきらと輝き、半月の柔かく、さだ

かならぬ光りに、目に見えるものすべてが洗われていた。眼前にはその家の影が黒々とよ

こたわり、鋸 のこぎり の歯のような屋根と、にょきりと立っている煙突が、銀白に輝く大空を背

景にくっきりと浮かびあがっていた。下の窓から流れ出る黄金色の光りは広い束となっ

て、果樹園や沼地に拡がっていた。

 突然、窓のひとつが暗くなった。台所から召使いたちがしりぞいたのだ。後はただ食堂

の明かりのみがともり、そこでは殺人鬼の主人と、それを夢にも知らぬお客とがなおも葉

巻をくゆらしながら語り合っていた。

 沼地の半分をおおっていた、白い羊毛に似た平原のような霧は、ステイプルトンの家の

ほうへ刻一刻と近づいて来た。すでに最初の淡い霧が、四角にふちどられた黄金色の窓の

あたりをくるくるまわりはじめた。果樹園の向こう側の壁はすでに見えなくなっていて、

木々は白い水蒸気の渦の中にまきこまれた。見るまに霧の渦は家の両側にしのびより、

徐々にぶ厚い土手のようになっていった。その上に見える二階と屋根は、もうろうとした

海上をただよう奇妙な船とも見えた。ホームズははげしく目の前の岩を手でたたき、いら

いらと足を踏みならした。

「十五分以内に出て来てくれないと、道は霧につつまれてしまう。三十分もたてば、目の

前に手を出しても見分けられなくなってしまうぞ」

「もっと高いところへひきかえそうか」

「うん、それが良い」

 そこで、霧の堤が流れて来るにつれ、後へ後へと引きさがって、ステイプルトンの家か

ら半マイルも離れてしまった。なおもその濃密な白い海は、上べりを月の光りに白銀に輝

かせながら、ゆっくりと、容赦 ようしゃ もなく進みつづけてくるのだった。

「あまり離れすぎてしまった」ホームズは言った。「われわれの所にたどりつかないうち

に襲われるチャンスをあたえるのは、絶対に危険だ。どんなことになろうと、ここからは

一歩もしりぞけない」

 彼はひざまずくと、耳をぴたりと大地におしつけた。「しめた! やって来るようだ」

 足早に歩く音が沼地の静けさを破って聞こえて来た。岩の間にうずくまりながら、われ

われは前の白銀に輝く霧の堤をじっと見つめた。足音は次第に高くなり、まるでカーテン

のように垂れこめた霧の中から、待ちもうけていた人物が出て来た。突然、すみきった星

あかりの夜になったので、彼はびっくりしてあたりをみまわした。それから、小道を急

ぎ、われわれの伏せているすぐわきを通り、うしろの長い坂道をのぼって行った。歩きな

がらも、彼は落ち着かぬ気持そのままに、絶えず左右を肩越しに見ていた。

「しっ!」ホームズが叫んだ。するとホームズがピストルの打ち金を起こす、鋭い音がき

こえた。

「気をつけろ! やって来るぞ!」

 あたりをはいまわる霧の堤の、どこか真ん中あたりから、かすかながら、はっきりと何

物かが走りつづける音が聞こえて来た。霧はわれわれとは五十ヤードと離れていなかっ

た。われわれは三人とも、その霧の腹の中から、どんな恐ろしいものが飛びだして来るの

かわからずに、じっと見守っていた。

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