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恐怖王-尾行曲線(1)

时间: 2021-08-29    进入日语论坛
核心提示:尾行曲線 飛行機は飛び去っても、彼の残した煙幕文字は、ボヤン、ボヤンと無限に大きく拡がりながら、いつまでも怪しい蜃気楼(
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尾行曲線


 飛行機は飛び去っても、彼の残した煙幕文字は、ボヤン、ボヤンと無限に大きく拡がりながら、いつまでも怪しい蜃気楼(しんきろう)の様に、大空に漂っていた。
 大江蘭堂は、余りにも大がかりな悪魔のプロパガンダに度肝(どぎも)を抜かれたのか、群集が立ち去ったあとまでも、ボンヤリと海岸に(たたず)んでいたが、ふと気がつくと、十間ばかり向うの波打際(なみうちぎわ)に、彼を見つめて立止っている、妙な人物を発見した。
「妙だ、あいつはなぜ、俺を見つめているんだろう」
 ムラムラと疑念が湧き上った。
 (よもぎ)の様な頭髪、ボロボロの古布子(ふるぬのこ)、繩を結んだ帯。乞食かしらん、だが、乞食がなぜあんなに彼を見つめていたのだろう。
 こちらもじっと(にら)みつけてやると、乞食みたいな男は、気拙(きまず)そうにそっぽを向いて、トボトボと歩き出した。歩きながら、チラッチラッと振返る。その様子が如何にも怪しいのだ。
 蘭堂はあきらめ切れないで、つい乞食のあとを追って歩き出した。
 広い砂浜を、右に左に、時には逆戻りさえしながら、乞食はいつまでも歩いて行く。その歩きぶりは、全くあてのない散歩でもしている様に見えるが、こうして蘭堂を退屈させて、尾行を思切(おもいき)らせる算段かも知れない。
 グルグル廻りながら、やがて砂浜を三十分も歩いたであろうか、ふと気がつくと、高い石垣の上で、五六人の子供が騒いでいた。彼等は乞食と蘭堂を指さして、しきりと何か(はや)し立てているのだ。
「あれ字だよ。伯父(おじ)さん達字を描いているんだよ。君、読めるかい」
「読めらい、あれ、英語のKって字だい」
 この異様な会話が、蘭堂の小耳を打った。子供()は一体何を云っているのだろうと、うしろを振返って見ても、別に文字らしいものは見当らぬ。だが「Kという字」の一言(いちごん)は聞捨てにならぬ。
 彼はふとある事を感づいて、急な坂道を、高い石垣の上へ駈け(あが)って行った。
「オイ君達何を云っているの? どこに字があるの?」
 子供等に尋ねると、
「ワーイ、伯父さん自分でかいた癖に知らないのかい。ホラごらん、あれだよ、あれだよ」

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