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少年侦探团-黄金塔(2)

时间: 2021-09-19    进入日语论坛
核心提示: その奥座敷は十畳の日本間なのですが、まず、まわりのふすまや障子をぜんぶ、がんじょうな板戸にかえ、それに、いちいち錠前を
(单词翻译:双击或拖选)
 その奥座敷は十畳の日本間なのですが、まず、まわりのふすまや障子をぜんぶ、がんじょうな板戸にかえ、それに、いちいち錠前をつけ、かぎは主人と支配人の門野(かどの)老人のふたりだけが、はだ身はなさず持っていることにしました。これが第一の関所です。
 もし賊が、この板戸をどうかしてひらくことができたとしても、その中には、さらに第二の関所があります。それは部屋のまわりの畳の下に電気じかけがあって、賊がどこからはいったとしても、その部屋の畳をふみさえすれば、たちまち家中のベルが、けたたましく鳴りひびくという装置なのです。
 しかし、関所はこの二つだけではありません。第三のいちばんおそろしい関所が、最後にひかえています。
 黄金塔は、広さ六十センチ四方、高さ一メートル三十センチほどの、長い箱の形をした、りっぱな木製のわくの中に入れて、その部屋の床の間に安置してあるのですが、この木のわくが、くせものなのです。
 本来ならば、このわくには四ほうにガラスをはるわけですが、大鳥氏はわざとガラスをはらず、だれでも自由に黄金塔に手をふれることができるようにしておきました。そのかわりに、わくの四すみの太い柱のかげに、赤外線防備装置という、おそろしいしかけがかくされていたのです。
 四本の柱に三ヵ所ずつ、つごう十二ヵ所に、赤外線を発射する光線をとりつけて、一口にいえば、黄金塔の上下左右を、目に見えぬ赤外光線のひもでつつんでしまってあるわけです。そして、もし、だれかが黄金塔に手をふれようとして、赤外線をさえぎりますと、べつの電気じかけに反応して、たちまちベルが鳴りひびくと同時に、そのさえぎったものの方向へ、ピストルが発射されるというおそろしい装置です。木のわくの上下のすみには、外部からは見えぬように、八丁の小型ピストルが、実弾をこめて、まるで小さな砲台のようにすえつけてあるのです。ただ、盗難をふせぐだけならば、黄金塔を大きな金庫の中へでも入れてしまえばいいのですが、大鳥氏は、せっかくこしらえさせたじまんの宝物を、人にも見せないで、しまいこんでおく気にはなれませんでした。そこで、気心(きごころ)の知れたお客さまには、じゅうぶん見せびらかすことができるように、こんな大げさな装置を考案したわけです。むろん、お客さまに見せるときは、わくの柱のかげにある秘密のボタンをおして、赤外線の放射をとめておくわけです。
 高価な純金の塔そのものも、たいへん世間をおどろかせましたが、この念入りな防備装置のうわさが、いっそう世評(せひょう)を高めたのです。むろん、大鳥時計店では防備装置のことをかたく秘密にしておいたのですけれど、いつとはなく輪に輪をかけたうわさとなって、世間にひろがり、塔のおいてある部屋にはいると、足がすくみ、からだがしびれてしまうのだとか、鋼鉄でできた人造人間が番をしていて、あやしいものがしのびよれば、たちまちつかみ殺してしまうのだとか、いろいろの奇妙な評判がたって、それが新聞にものり、今ではだれ知らぬものもないほどになっていました。
 二十面相はそこへ目をつけたのです。一夜に千万円もの美術品をぬすんだこともある二十面相のことですから、黄金の塔そのものは、さほどほしいとも思わなかったでしょうが、それよりも、うわさに高いげんじゅうな防備装置にひきつけられたのです。人のおそれる秘密のしかけをやぶって、まんまと塔をぬすみだし、世間をアッといわせたいのにちがいありません。
「どうだ、おれには、それほどの腕まえがあるんだぞ。」
 と、いばってみせたいのです。警察や明智名探偵を出しぬいて、「ざまをみろ。」と笑いたいのです。二十面相ほどの盗賊になりますと、盗賊にもこんな負けぬ気があるのです。
 名探偵明智小五郎は、その夕刊新聞の記事を読みました。翌日には、大鳥時計店の主人が、わざわざ探偵の事務所をたずねてきて、黄金塔の保護を依頼して帰りました。そして、名探偵は、むろんこの事件をひきうけたのです。
 前の事件で、軽気球のトリックにかかったのは、中村捜査係長はじめ、警官隊の人たちでしたが、明智にも責任がないとはいえません。賊に出しぬかれたうらみは、人いちばい感じているのです。こんどこそ、みごとに二十面相をとらえて恥辱(ちじょく)をそそがなければなりません。名探偵のまゆには深い決意の色がただよっていました。
 ああ、なんだか心配ではありませんか。怪盗二十面相は、どんな魔術によって、黄金塔をぬすみだそうというのでしょう。名探偵は、はたしてそれをふせぐことができるでしょうか。探偵と怪人の一騎うちの知恵くらべです。悪人は悪人の名まえにかけて、名探偵は名探偵の名まえにかけて、おたがいに、こんどこそ負けてはならぬ真剣勝負です。
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