二重敬語とは、同じ種類の敬語を重複して使用することであり、具体的には「尊敬語+尊敬語」、または「謙譲語+謙譲語」の構造のことを指します。その一例として、食品の説明書きなどでよく目にする「お召し上がりください」は、尊敬語の動詞「召し上がる」に尊敬の敬語表現「お〜ください」が接合していますので、明らかな二重敬語です。しかし、この言い回しはすでに広く普及し、日本語の習慣として定着していると言っても良いでしょう。
このように、時の移ろいとともに変化する言語の性格上、二重敬語は間違いとか禁則(タブー)と断定すべきものではありません。文部科学省・文化審議会の答申「敬語の指針」においても、二重敬語のことを「一般に適切ではないとされている」と表現しているに過ぎません。従って、少なくとも会話のときには、言い間違いを気にしていては臨機応変な受け答えができませんから、二重敬語をことさら意識する必要はないでしょう。ただし、人の閲覧に供する文書やスピーチ原稿を書くときには、できる限り“適切”な敬語を使うように心掛けましょう。