すると老父と老母が、娘を囲んで泣いているではありませんか。スサノオは、泣いている老夫婦が誰なのか尋ねました。
老父は答えます。
「私は山の神のオオヤマツミの息子です。名前はアシナヅチ(足名椎命)と申します。妻の名前はテナヅチ(手名椎命)で、娘はクシナダヒメ(櫛名田比売)です」
スサノオは続けて質問します。
「どうして泣いているのだい?」
「私にはもともと八人の娘がいました。けれども高志(こし?場所は不詳。越の国つまり現在の北陸地方だとする説あり)のヤマタノオロチが毎年やって来て、娘たちを食べてしまったのです。そして今がちょうどまたやって来る時季なので、泣いていたのです」