日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 黑柳彻子 » 正文

トットチャンネル(63)

时间: 2018-05-30    进入日语论坛
核心提示:二宮金次郎《にのみやきんじろう》 テレビにしても、舞台《ぶたい》にしても、俳優にとって、一番困るのは、セリフが出て来ない
(单词翻译:双击或拖选)
二宮金次郎《にのみやきんじろう》
 
 テレビにしても、舞台《ぶたい》にしても、俳優にとって、一番困るのは、セリフが出て来ない、ということだった。特に、テレビのナマ放送は、終りの時間が決まっているから、時間通りに、進行しなくちゃならなかった。そんな訳で、どうしても、セリフを忘れちゃう人や、おぼえられない人は、カンニング、という事になるのだった。それにしても、学校の時は、一人の先生の目を盗《ぬす》めば良かったんだけど、テレビでは、何百万人、時には、何千万人の目を盗んで、カンニングするんだから、(凄《すご》いなあー)と、トットは、感心して、先輩《せんぱい》の俳優さんのやりかたを、見学するのだった。それにしても不思議なのは、圧倒《あつとう》的にカンニングするのは男優さんで、どういうわけか、女優さんで、カンニングをする人は、いなかった。これは、女優のほうが、記憶力《きおくりよく》がいいからか、それとも生《き》真面目《まじめ》なせいなのか、よくわからないけど、とにかく、カンニングは、男優さんの専売特許だった。
 カンニングの方法で、一番多いのは、手に持っているノートや新聞、週刊誌、扇子《せんす》、などに、書きこむやりかただった。でも、世の中は、うまくいかないもので、「老眼鏡をかけないと、カンニングも読めない」と、こぼしている中年の俳優さんもいた。
 それにしても、トットが出た番組で、電車の中ならともかくも、バーのせまいカウンターに、五人|並《なら》んだ男優さん全員と、カウンターの中のバーテンさんが、手に手に、カンニング用の新聞や雑誌を持ってるのを見た。誰《だれ》も飲みものを持たないで、新聞紙を握《にぎ》りしめて酔《よ》っぱらった演技をしてるのが異様で、見てるトットのほうが、酔っちゃいそうだった。モダン・タイムスで、チャップリンが、カンニングを、カフスに書いといたら、踊《おど》った瞬間《しゆんかん》に、カフスが、ポン! と飛んじゃって、大爆笑《だいばくしよう》、というのがあったけど、本当に、みんな、苦労していることが、よくわかった。また、役によっては、手に何も持てない、という時もある。そういうときは、なにか、まわりの物[#「物」に傍点]に書きこんでる人を、トットは、よく見かけた。でも、この方法は、手許《てもと》に無いだけに、失敗も多かった。
 例えば、電信柱。トットも一緒《いつしよ》に出ていた刑事《けいじ》さんの役の人は、電信柱の陰《かげ》にかくれて、犯人を待ちながら、沢山《たくさん》セリフをいう設定だった。だから、この刑事さんは、セリフを電信柱に、几帳面《きちようめん》に書いた。ところが、本番前に、照明さんの都合で、電信柱を少し移動させることになり、そのために、電信柱のむきが、変った。そんな事を知らない刑事さんは、ヒタッ!! と電信柱の陰にかくれた。(なんということだ!! セリフが無い!)刑事さんは困りはてて電信柱の廻《まわ》わりを、グルグルと犬みたいに、まわった。おかげで、刑事さんは、犯人に、まる見え、という結果になってしまった。
 でも、こんな風に、なにか書く物[#「物」に傍点]がある時はいいけど、いろんな都合で、全く無い場合だってある。そういう極限状態でも、カンニングを試みた人は、大勢いる。トットの見た限りでいうと、お丼《どんぶり》の中の、おうどんに書いた人、おまんじゅうに書いた人、お位牌《いはい》に書いた人、自分のはいてる運動靴《うんどうぐつ》に書いた人、すき焼きの白菜に書いた人、マージャンのパイに書いた人、相手役のワイシャツのポケットに書いた人、(この人は、自分のセリフの時、上着をひらいて見せて貰《もら》う、という約束《やくそく》を、相手役と、とりつけた心臓の強い人)そして、こういうのは、たいがい、失敗のうちに終るのだった。
 伝説になっているカンニングの失敗篇《しつぱいへん》は、こういうのだった。
 時代もので、長火鉢《ながひばち》の灰の中に、男優さんが、カンニング・ペーパーを埋《う》めた。むかい側に、おかみさん役の中年の女優さんが座《すわ》り、やりとりがある。男優さんの考えとしては、こうだった。そのシーンになって、長火鉢の前に座るやいなや、まず火箸《ひばし》を手に取る。それから、なんとなく灰の中から、例の紙を取り出し、いかにも、炭《すみ》の様子を見ている風をしながら、紙を見て、セリフをいう。これなら、不自然には、見えなかろう。ところが、この中年の女優さんは、男優さんを、好きじゃなかった。そこで、この女優さんは、長火鉢の前に、どん! と座ると、物もいわずに、火箸を、しっかり握ってしまった。男優さんは、狼狽《ろうばい》して、「一寸《ちよつと》、火箸、お貸しよ」とかいって引っぱるんだけど、女優さんは、にっこり笑いながら、「あら、こんなこと、お前さんに、させちゃあ、女がすたるよ」といって、絶対に、渡《わた》さない。仕方なく、男優さんは、(異常と思われても、セリフが出ないよりは、いいだろう)と、灰の中に、手をつっこんで、紙を引っぱり出す。やっと、姿を現した紙を見よう、とする間もなく、女優さんが、火箸で、パシャ! パシャ! と灰を上から、かけちゃう。とうとう、何もセリフが始まらないうちに、火箸の取りっこと、ののしり合う、という大騒《おおさわ》ぎ。以来、このシーンは、テレビ界に伝説として、残った話の一つとなった。
 でも、失敗ばかりとは限らないで、立派な伝説として、後世に語りつがれているのもある。それは、左卜全《ひだりぼくぜん》さんと、お地蔵さん。左卜全さんが、お地蔵さんの、よだれかけに、カンニングを書いておいた。意地の悪い人がいるもので、本番直前に、全部、お地蔵さんを、後ろむきに並《なら》べてしまった。さて、このシーンに入って来た卜全さんは、ちらり、とお地蔵さんを見るなり、つかつかと、そばに寄り、
「村の童《わらべ》が、いたずらしおって!」
 といいながら、お地蔵さんを、次々と、元《もと》のむきに直してしまった。そして、全く、何事もなかったように、よだれかけを見ながら、セリフを、おっしゃった。そばにいた人達《ひとたち》は、思わず本番中なのも忘れ、拍手《はくしゆ》をしそうになった、という。
 悪役で有名な上田吉二郎さんは、お弟子《でし》さんに、長くて大きい巻物状の紙を、カメラの横に持たせるので有名だった。セリフは絵入りが多かった。あるとき、トットが見ていると、火山の噴火《ふんか》してる絵があったので、
「これ、何のセリフなんですか?」
 と聞いてみたら、あの独特のダミ声で、
「え?! と、おどろく!」
 とおっしゃった。たった「え?!」なら、おぼえたら良さそうなのに、あんな何色もの、クレヨンで噴火の絵を……。トットは、その優雅《ゆうが》さに、驚嘆《きようたん》したのだった。
 テレビでは、マイクに声が入ってしまうので、プロンプターは通用しない。でも、舞台では、プロンプターが、どこかに、かくれていて、セリフが途切《とぎ》れると、すぐ、台本を見ながら、つけてくれる。
 トットの知ってる、あらゆるカンニング、プロンプターの中で、最高と思ったのは、三木のり平さんの、二宮金次郎だった。のり平さんが主役の「あかさたな」という芸術座の芝居《しばい》のとき、あまりのセリフの量に、のり平さんは、ふつうのプロンプターでは、間に合わない、と考えた。そこで、その時のお弟子さんが、背の小さい人だったのを幸い、その人に、ちょんまげをつけさせ、衣裳《いしよう》を着せ、たきぎを背負わせ、床《とこ》の間に、二宮金次郎の置きものの恰好《かつこう》で、立っているように、いいきかせた。
 なぜ、これが、いい考えか、というと、二宮金次郎は、御存知のように、本を読んでいる恰好をしている。これを台本に換《か》えればいい、と、のり平さんは考えたのだった。なるほど、のり平さんのいる座敷《ざしき》の、床の間の二宮金次郎が、プロンプターなら、こんなに、近くて、いいことはない。遠くから見ると、確かに、置きものに見えた。でも、時々、凄い、いきおいで、置きものが、ページをめくるので、これは、おかしいのじゃないか、というので、とりやめになった、ということだった。これほど滑稽《こつけい》で、いいアイデアのプロンプターを考える人は、古今東西、三木のり平さんぐらいしかいないに違《ちが》いないと、トットは、何度も思い出し笑いをしながら、感心したのだった。
 その後、次々と、テレビ技術は開発されたけど、一向に、カンニング技術は、改善されなかった。アメリカでは、カメラの下や横に、セリフが電光|掲示板《けいじばん》のように、どんどん出る、と聞いた。日本のほうが俳優さんを信用してるのか、そういう機械は導入されなかった。白菜に万年筆でセリフを書いてる男優さんの姿は、哀《かな》しく、テレビが二十世紀の新らしいメディアという感覚は、このとき、トットには、全く無かった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%