日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 黑柳彻子 » 正文

トットチャンネル20

时间: 2018-10-14    进入日语论坛
核心提示:自分の声 トット達《たち》は、今日、とても興奮していた。それは、自分の声を聞かせてもらえる実習が、あるからだった。(自分
(单词翻译:双击或拖选)
 自分の声
 
 
 トット達《たち》は、今日、とても興奮していた。それは、自分の声を聞かせてもらえる実習が、あるからだった。
(自分の声を聞く!)
 それは、みんなにとって、生まれて初めての経験だった。今なら、小学生でも、自分用の録音機、カセット・レコーダーや、テープ・レコーダーを持っていて、自分の声を聞いてるけど、この、昭和二十八年当時は、NHKとか、他《ほか》の放送局など、特別のところにしか、まだ、テープ・レコーダーというものはなかった。また、あっても、ラジオの放送に使うことは、まれで、ほとんど全部が、ナマの時代だった。
 トット達は、NHKのラジオの第五スタジオに連れて行かれた。第四次の歌の試験も、ラジオのスタジオだったけど、あのときは、五人くらい一緒《いつしよ》にスタジオに入り、順番に、ハクボクで描《か》いてある足形の中に立って、あたえられた楽譜《がくふ》を必死に見ながら歌ったので、あまり、まわりを見ていなかった。今日の第五スタジオを、よく見ると、スタジオのまん中に、グリーンのカーテンが天井《てんじよう》から垂《た》れていたり、床《ゆか》から、すっくと立った、大きなマイクロフォンがあったり、ガラス窓のむこうの小さい部屋には、いっぱい機械があったり、折りたたみ式の椅子《いす》が沢山《たくさん》ならんでたり、重たいドアが、いくつもあったり、木のついたて[#「ついたて」に傍点]があったり、とても珍《めず》らしかった。トットは、キョロキョロして、隅《すみ》から隅まで観察した。当然だけど、窓がなくて、電燈《でんとう》は、いっぱいついてるけど、
(なんとなく薄暗《うすぐら》い感じだ)と、トットは思った。
 大岡先生は、みんなに声のテスト用の紙を配った。二十八人の生徒は、椅子に、少し固くなってすわり、その紙を見た。女性用のは、こういうセリフだった。
「まあ、嫌《いや》な方。妾《わたし》がその事について、何故《なぜ》だまってるかとおっしゃるの。そして、そのわけを、いま、あなたは、何気なく妾からきき出そうってわけなのね。冗談《じようだん》じゃないわ。ほほほゝゝゝ。何て身勝手な話なんでしょう——。そんならおききしますけれど、一体あなたは、妾の敵なの、味方なの。え。どっち。まずそれをはっきりしていただきたいわ——」
 ……前後がよくわからないけど、(なんだか、この女の人は怒《おこ》ってるらしい)と、トットは判断した。男性のほうのは、
「晴れた日は、朝ごとに富士がよく見える」
 といった、朗読だった。みんな口々に紙を見ながら声にして、よみ始めた。ひとしきり声が大きくなったところで、大岡先生が、いった。
「さ、それじゃ、そろそろ、声の録音、始めましょうか」
 ガラス窓のむこう側から、中年の男の人が、二つもドアを開けて、こっちのスタジオの中に入って来た。エレベーターの中で見かけたことのある人で、茶色の大きいサンダルをズルズルひきずるようにして、マイクのそばに来た。頭の毛が沢山あって、上のほうに突《つ》っ立って生えていた。その、少しユーウツそうに見える人は、
「マイクから三十センチくらい、離《はな》れて」とか、「持ってるセリフの紙を、マイクにさわらせないように」とか、「なるべく下を見ないで、しゃべるように」とか、いろいろ注意してくれた。トットたちは、ひとつひとつに感心して、うなずき、おじさんの言う通りにしよう、と思っていた。
「じゃ、始めの人から、おねがいします」
 その人は、また、サンダルをズルズルさせながら、ガラス窓のむこうの部屋に、もどって行った。トットは、
(自分の名前を、セリフの前に言うのかな?)
 と思ったから、大岡先生に、小声で聞いた。
「あの、名前は、いうんですか?」
「ああ、そうしましょうね」
 と、大岡先生は、軽くいった。
 トットは、もう一つ質問があったので、また、大岡先生に聞いた。
「いまの、おじさん、下を見ないで、っておっしゃったけど、少しは見ても、いいですか?」
 大岡先生は、いつものように小腰《こごし》をかがめ、手の甲で口をかくす喋《しや》べりかたで、トットに近づくと、いった。
「あなたさま、あの方《かた》は、おじさん[#「おじさん」に傍点]じゃございません。あの方は、声や音を調整なさる、ミクサーさん。よろしゅうございますか? みなさんも。あの方は、ミクサーさんです」
 トットは真赤《まつか》になった。しかも、こっちの話してる声が、マイクを通して、むこうに聞こえてるらしく、こっちむきに座《すわ》ってる、そのミクサーさんは、ガラス窓ごしにトットのほうを、チラリと見た。
 それから大岡先生は、適当に順番を決めた。この頃《ころ》、大岡先生は順番を決めるとき、プロ的な人を先にして、トットは、いつも、ビリだった。というのも、トットを先にしたときに、必ずゴタゴタが起るので、みんなの模範《もはん》になるような、馴《な》れてる人から先にすることに、したようだった。従って、トットは、いつも、最後になるのだった。短大を中退という、プロ的なトップバッターの女性は、右手に紙を持ち、左手を腰にあてた恰好《かつこう》で、ガラス窓のミクサーさんに、会釈《えしやく》をすると、
「よろしくお願いしまーす」と、いった。
 ミクサーさんは、指で輪っかを作って、「OK」という、しぐさをした。プロ的な人は、うなずくと、自分の名前を言い、大きく息を吸ってから、高い、しっかりした調子の声で始めた。
「まあ、キライな方《かた》。メカケが、その事について、何故だまってるかとおっしゃるの。そして、そのわけを、いま、あなたは、何気なく、メカケからきき出そうってわけなのね」
 そこまでいったとき、大岡先生が、足音をしのばせて、その女の人に近より、
「ちょっと、ちょっと。始めから、もう一度! ミクサーさん、ご免《めん》なさい。テープ、もどして下さいね。あの、あなた、これね、�キライな方�じゃなくて、�イヤな方�それから、�メカケ�じゃなくて、�わたし�と読んで頂戴《ちようだい》。じゃ、お願いします」と、いった。
 トットは、自分では、「わたし」と読むつもりだったけど、プロ的な人が、「メカケ」と読んだので、
(大変! もう少しで、間違《まちが》えて、『わたし』と読むところだった……)と思った瞬間《しゆんかん》だったので、少し混乱したけど、静かにしていた。
 そして、トットの番になった。銀色の、蜂《はち》の巣《す》模様みたいな形の穴の沢山ある四角いマイクを、「相手の人間」と思ってしゃべるのは、とても難かしかった。それでも、とにかく、トットが終ったので、全部が終了《しゆうりよう》した。
 大岡先生は、満足そうに、うなずくと、マイクに近より、ミクサーさんにいった。
「じゃ、テープの送り返し、お願いします」
 いよいよ、自分の声が、出てくるのだ。みんな、心配なのと、照れるのと、期待するのとで、はしゃいだ声を出していた。
 当然、プロ的な女の人から始まった。スピーカーから、声が出た。ひびきのある、大きい声だった。その人は、首をすくめて、
「あら、私、こんな声かしら……」といったけど、みんなが、「上手ねえ」とか言ったので、だまったまま、聞き入った。そんな風に、順々に送り返しが来て、そのたびに、みんなが反応して、とうとう、トットの番になった。前の人のセリフが終ったところで、少しゴトゴトという音が入った。
「あれは、私の靴《くつ》の音でーす」と、トットが言ったので、みんな笑った。ちょっとした間《ま》があり、女の人の声が聞こえた。
「黒柳徹子」
 鼻にかかったような、ヘンな声だった。甘《あま》ったるいようでいて、愛想のない、不思議な声だった。トットに、それが自分の声だ、とわかるまでに、随分《ずいぶん》、時間がかかった。トットは立ち上ると、ミクサーさんのほうを向いて叫《さけ》んだ。
「すいません。これ、機械がヘンですから、直して下さい!」
 ガラスのむこうのミクサーさんは、顔をあげると、こっちを見て、いった。
「なんです?」
 トットは、いそいで、いった。
「あの、NHKの機械が、こわれてるみたいですから、ちょっと直してから、私の声、出してほしいんですけど」
 ミクサーさんは、きっぱりとした調子で、こういった。
「こわれていません。これは、あなたの声です」
 トットは、いいはった。
「だって、私の声、こういうんじゃないんです。絶対、NHKの機械こわれてます!」
 ミクサーさんのおじさんは、機械を点検してみる風もなく、くり返した。
「これが、あなたの声です」
 突然《とつぜん》、トットは、泣き出した。泣きながらいった。
「だって、こんな声じゃ、放送に出られない」
 あとから、あとから涙《なみだ》が出た。自分の声を、いい声とは、決して思っていなかったけど、こんな聞いたこともない、不思議な声とは思っていなかった。そのとき、ミクサーさんが、いった。前より、声は少しやさしくなっていた。
「自分の耳で聞いてるのと、実際の声とは、誰《だれ》でも違って思えるんです。あなただけじゃなくてね。口や顔の中で共鳴したのが自分の耳に聞こえるからね。もう一度、出してみましょうか?」
 ミクサーさんは、親切に、もう一度、始めから、トットの声を出してくれた。それを聞くと、トットは、更《さら》に泣いた。
「こんな声じゃない。こんなヘンな声じゃない」
 実習が終り、みんなが、興奮しながらスタジオを出て歩く後ろから、トットは、一人だけ、みじめに泣きながら、ついて行った。
「あんな声じゃない。あんなヘンな声じゃない」
 その日、一日中、トットは泣いて暮《くら》した。機械を調べもしないで、
「これが、あなたの声です!」と、なんの慰《なぐさ》めもなく言ったミクサーのおじさんも、意地悪に思えた。「あら可愛《かわい》い声よ」という、友達の言葉も、嘘《うそ》に聞こえた。泣いてない友達が、うらやましかった。
 これが、生まれて初めて、トットが自分の声を聞いた日の出来ごとであり、このあと、何年たっても、トットは、自分の声を聞くたびに、
「やっぱり、NHKの機械は、こわれてる」と、思うのだった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%