「あいつめ、割り込むのをやめたようでよかったわい。ところで、あいつはどこにいるんだ」
「知りませんわ」ペチュニアおばさんは、どうでもよいという口調だ。「家の中にはいないわ」
バーノンおじさんが、ウーッと唸うなった。
「ニュース番組を見てるだと……」おじさんが痛つう烈れつに嘲あざけった。「やつの本当の狙ねらいを知りたいもんだ。まともな男の子供がニュースなんぞに興きょう味みを持つものか――ダドリーなんか、世の中がどうなっているかこれっぽっちも知らん。おそらく首相の名前も知らんぞ いずれにせよだ、わしらのニュースに、あの連中のことなぞ出てくるはずが―――」
「バーノン、シーッ」ペチュニアおばさんの声だ。「窓が開いてますよ」
「ああ――そうだな――すまん」
ダーズリー家は静かになった。朝食用のシリアル「フルーツ・ン・ブラン」印のコマーシャルソングを聞きながら、ハリーは、フィッグばあさんがひょっこりひょっこり通り過ぎるのを眺ながめていた。ミセス・フィッグは近くのウィステリア通りに住む、猫好きで変わり者のばあさんだ。独ひとりで顔をしかめ、ブツブツ呟つぶやいている。ハリーは、茂みの陰かげに隠れていて本当によかったと思った。フィッグばあさんは、最近ハリーに道で出会うたびに、しつこく夕食に誘さそうのだ。ばあさんが角を曲がり姿が見えなくなったとき、バーノンおじさんの声が再び窓から流れてきた。
「ダッダーは夕食にでも呼ばれて行ったのか」
「ポルキスさんのところですよ」ペチュニアおばさんが愛いとおしげに言った。「あの子はよいお友達がたくさんいて、本当に人気者で……」
ハリーは吹き出したいのをぐっと堪こらえた。ダーズリー夫妻ふさいは息子のダドリーのことになると、呆あきれるほど親バカだ。この夏休みの間、ダドリー軍ぐん団だんの仲間に夜な夜な食事に招かれているなどというしゃれにもならない嘘うそを、この親は鵜う呑のみにしてきた。ハリーはちゃんと知っていた。ダドリーは夕食に招かれてなどいない。毎まい晩ばん、ワルガキどもと一いっ緒しょになって公園で物を壊こわし、街まち角かどでタバコを吸い、通りがかりの車や子供たちに石をぶつけているだけだ。ハリーは夕方、リトル・ウィンジングを歩き回っているときに、そういう現場を目もく撃げきしている。休みに入ってから毎日のように、ハリーは通りをぶらぶら歩いて、道みち端ばたのゴミ箱から新聞を漁あさっていたのだ。