ダドリーは相変わらず巨大だったが、一年間の厳きびしいダイエットと、新たにある能力が発見されたことで体たい格かくが鍛きたえられ、相当変化していた。バーノンおじさんは、聞いてくれる人なら誰でもおかまいなしに自慢じまんするのだが、ダドリーは最近、「英えい国こく南なん東とう部ぶ中等学校ボクシング・ジュニアヘビー級チャンピオン」になった。小学校のとき、ハリーはダドリーの最初のサンドバッグ役だったが、そのときすでにものすごかったダドリーは、おじさんが「高貴こうきなスポーツ」と呼んでいるもののお陰かげで一いっ層そうものすごくなっていた。ハリーはもうダドリーなどまったく怖こわいと思わなかったが、それにしても、ダドリーがより強力で正確なパンチを覚えたのは喜ばしいことではなかった。このあたり一いっ帯たいの子どもたちはダドリーを怖がっていた。――「あのポッターって子」も札ふだつきの不良で、「セント・ブルータス更こう生せい不能ふのう非行ひこう少しょう年ねん院いん」に入っているのだと警けい戒かいされ怖がられていたが、それよりも怖いのだ。
ハリーは芝生しばふを横切ってくる黒い影を見つめながら、今夜は誰を殴なぐってきたのだろうと思った。「こっちを見ろよ」人影を見ながらハリーは心の中でそう言っている自分に気づいた。「ほーら……こっちを見るんだ……僕はたった一人でここにいる……さあ、やってみろよ……」
ハリーがここにいるのをダドリーの取り巻きが見つけたら、間違いなく一直線にこっちにやってくる。そしたらダドリーはどうする 軍団の前で面子めんつを失いたくはないが、ハリーを挑ちょう発はつするのは怖いはずだ……愉快ゆかいだろうな、ダドリーがジレンマに陥おちいるのを見るのは。からかわれても何にも反はん撃げきできないダドリーを見るのは……ダドリー以外の誰かが殴りかかってきたら、こっちの準備はできている――杖つえがあるんだ。やるならやってみろ……昔、僕の人生を惨みじめにしてくれたこいつらを、鬱うっ憤ぷん晴ばらしの捌はけ口にしてやる。
しかし、誰も振り向かない。ハリーを見もせずに、もう柵のほうまで行ってしまった。ハリーは後ろから呼び止めたい衝しょう動どうを抑えた……喧嘩けんかを吹っかけるのは利口なやり方ではない……魔法を使ってはいけない……さもないとまた退学の危き険けんを冒おかすことになる。