ダドリー軍ぐん団だんの声が遠退とおのき、マグノリア通りのほうへと姿を消した。
「ほうらね、シリウス」ハリーはぼんやり考えた。「ぜんぜんむちゃしてない。おとなしくしているよ。シリウスがやったこととまるで正反対だ」
ハリーは立ち上がって伸びをした。ペチュニアおばさんもバーノンおじさんも、ダドリーが帰ってきたときが正しい帰き宅たく時じ間かんで、それよりあとは遅刻ちこくだと思っているらしい。バーノンおじさんは、こんどダドリーより遅く帰ったら、納な屋やに閉じ込めるとハリーを脅おどしていた。そこでハリーは、欠伸あくびを噛かみ殺し、しかめ面つらのまま、公園の出口に向かった。
マグノリア通りは、プリベット通りと同じく角張かくばった大きな家が立ち並び、芝生しばふはきっちり刈かり込まれていたし、これまた四角四面の大物ぶった住人たちは、バーノンおじさんと同じく磨みがき上げられた車に乗っていた。ハリーは夜のリトル・ウィンジングのほうが好きだった。カーテンの掛かかった窓々が、暗くら闇やみの中で点々と宝石のように輝かがやいている。それに、家の前を通り過ぎるとき、ハリーの「非ひ行こう少しょう年ねん」風ふうの格かっ好こうをブツブツ非難ひなんする声を聞かされる恐れもない。ハリーは急ぎ足で歩いた。すると、マグノリア通りの中ほどで再びダドリー軍団が見えてきた。マグノリア・クレセント通りの入口で互いにさよならを言っているところだった。ハリーはリラの大木の陰かげに身を寄せて待った。
「……あいつ、豚ぶたみたいにキーキー泣いてたよな」マルコムがそう言うと、仲間なかまがバカ笑いした。
「いい右フックだったぜ、ビッグディー」ピアーズが言った。
「また明日、同じ時間だな」ダドリーが言った。
「俺おれんとこでな。親父おやじたちは出かけるし」ゴードンが言った。
「じゃ、またな」ダドリーが言った。
「バイバイ。ダッド」
「じゃあな、ビッグ」
ハリーは、軍団が全員いなくなるまで待ってから歩き出した。みんなの声が聞こえなくなったとき、ハリーは角を曲がってマグノリア・クレセント通りに入った。急ぎ足で歩くと、ダドリーに声が届くところまですぐに追いついた。ダドリーはフンフン鼻歌を歌いながら、気ままにぶらぶら歩いていた。