何かが夜を変えた。星をちりばめた群ぐん青じょう色いろの空が、突然光を奪うばわれ、真まっ暗くら闇やみになった――星が、月が、路ろ地じの両端の道にある街がい灯とうのぼーっとした明かりが消え去った。遠くに聞こえる車の音も、木々の囁ささやきも途と絶だえた。とろりとした宵よいが、突然、突つき刺さすように、身を切るように冷たくなった。二人は、逃げ場のない森しん閑かんとした暗闇に、完全に取り囲まれた。まるで巨大な手が、分厚ぶあつい冷たいマントを落として路地全体を覆おおい、二人に目隠しをしたかのようだった。
一いっ瞬しゅん、ハリーは、そんなつもりもなく、必死で我慢がまんしていたのに、魔法を使ってしまったのかと思った――やがて理性が感覚に追いついた――自分には星を消す力はない。ハリーは何か見えるものはないかと、あっちこっちに首を回した。しかし、暗闇はまるで無重力のベールのようにハリーの目を塞ふさいでいた。
恐きょう怖ふに駆かられたダドリーの声が、ハリーの耳に飛び込んできた。
「な、なにをするつもりだ や、やめろ」
「僕はなにもしていないぞ 黙だまっていろ。動くな」
「み、見えない ぼく、め、目が見えなくなった ぼく――」
「黙ってろって言ったろう」
ハリーは見えない目を左右に走らせながら、身じろぎもせずに立っていた。激はげしい冷気れいきで、ハリーは体中が震ふるえていた。腕には鳥とり肌はだが立ち、首の後ろの髪かみが逆立さかだった――ハリーは開けられるだけ大きく目を開け、周囲に目を凝こらしたが何も見えない。
そんなことは不可能だ……あいつらがまさかここに……リトル・ウィンジングにいるはずがない……ハリーは耳をそばだてた……あいつらなら、目に見えるより先に音が聞こえるはずだ……。
「パパに、い、言いつけてやる」ダドリーがヒーヒー言った。「ど、どこにいるんだ な、なにをして――」
「黙っててくれないか」ハリーは歯を食いしばったまま囁ささやいた。「聞こうとしてるんだから――」
ハリーは突然沈ちん黙もくした。まさにハリーが恐れていた音を聞いたのだ。