「こっちへ」
ハリーは牡鹿に向かって叫さけんだ。同時にさっと向きを変え、ハリーは杖つえ先さきの灯あかりを掲かかげて、全力で路ろ地じを走った。
「ダドリー ダドリー」
十歩と走らずに、ハリーはその場所にたどり着いた。ダドリーは地面に丸くなって転がり、両腕でしっかり顔を覆おおっていた。二体目の吸魂鬼がダドリーの上に屈かがみ込こみ、ヌルリとした両手でダドリーの手首をつかみ、ゆっくりと、まるで愛いとおしむように両腕をこじ開け、フードを被かぶった顔をダドリーの顔のほうに下げて、まさにキスしようとしていた。
「やっつけろ」
ハリーが大声を上げた。するとハリーの創つくり出した銀色の牡鹿は、怒涛どとうのごとくハリーの脇わきを駆かけ抜けていった。吸魂鬼の目のない顔が、ダドリーの顔すれすれに近づいた。そのとき、銀色の角が吸魂鬼をとらえ、空中に放り投げた。吸魂鬼はもう一体の仲間と同じように、宙ちゅうに飛び上がり、暗闇に吸い込まれていった。牡鹿は並なみ足あしになって路地の向こう端まで駆け抜け、銀色の靄もやとなって消えた。
月も、星も、街がい灯とうも急に生き返った。生なま温ぬるい夜風が路地を吹き抜けた。周囲の庭の木々がざわめき、マグノリア・クレセント通りを走る車の世せ俗ぞく的てきな音が、再びあたりを満たした。
ハリーはじっと立っていた。突然正常に戻ったことを体中の感覚が感じ取り、躍やく動どうしていた。ふと気がつくと、シャツが体に張りついていた。ハリーは汗びっしょりだった。
“这边!”哈利朝牡鹿喊道。他转身拔腿在小巷里奔跑,手里高高举着点亮的魔杖。“达力?达力?”
他跑了十几步就赶到了他们跟前。达力蜷缩在地上,两只胳膊死死地护着脸。第二个摄魂怪正矮身蹲在他身边,用两只黏糊糊的手抓住达力的手腕,几乎很温柔地把两只胳膊慢慢地掰开了,那颗戴兜帽的脑袋朝达力的脸垂下去,似乎要去亲吻他。
“抓住它!”哈利喊道,随着一阵快速的呼啸声,他变出来的那头银色牡鹿从他的身边跑过。摄魂怪那没有眼睛的脸离达力的脸只差不到一英寸了,说时迟那时快,银色的鹿角刺中了它,把它挑起来抛到半空。它像刚才它的那个同伴一样,腾空逃走,被黑暗吞没了。牡鹿慢跑到小巷尽头,化为一股银色烟雾消失了。
月亮、星星和路灯一下子又发出了亮光。小巷里吹过一阵温暖的微风。邻居家花园里的沙沙树叶声、木兰花新月街那尘世里的汽车声又充斥了夜空。哈利一动不动地站着,所有的感官都在跳动不止,以适应这突然的变化。过了一会儿,他才意识到他的T恤衫粘在身上,他全身都被汗水湿透了。