片かた足あしを引きずりながら窓際を通り過ぎたとき、柔らかく羽を擦こすり合わせ、ヘドウィグが小さなゴーストのようにスイーッと入ってきた。
「遅おそかったじゃないか」ヘドウィグが籠かごのてっぺんにふわりと降おり立ったとたん、ハリーが唸うなるように言った。「それは置いとけよ。僕の仕事をしてもらうんだから」
ヘドウィグは、死んだカエルを嘴くちばしにくわえたまま、大きな丸い琥こ珀はく色いろの目で恨うらめしげにハリーを見つめた。
「こっちに来るんだ」ハリーは小さく丸めた三枚の羊皮紙と革ひもを取り上げ、ヘドウィグの鱗うろこ状じょうの脚あしに括くくりつけた。「シリウス、ロン、ハーマイオニーにまっすぐに届けるんだ。相当長い返事をもらうまでは帰ってくるなよ。いざとなったら、みんながちゃんとした手紙を書くまで、ずっと突っついてやれ。わかったかい」
ヘドウィグはまだ嘴がカエルで塞ふさがっていて、くぐもった声でホーと鳴いた。
「それじゃ、行け」ハリーが言った。
ヘドウィグはすぐさま出発した。その後すぐ、ハリーは着き替がえもせずベッドに寝転び、暗い天井を見つめた。惨みじめな気持に、こんどはヘドウィグにイライラをぶつけた後こう悔かいが加わった。プリベット通り四番地で、ヘドウィグは唯ゆい一いつの友達なのに。シリウス、ロン、ハーマイオニーから返事をもらって帰ってきたらやさしくしてやろう。
三人とも、すぐに返事を書くはずだ。吸魂鬼ディメンターの襲しゅう撃げきを無む視しできるはずがない。明日の朝、目が覚めたら、ハリーをすぐさま「隠かくれ穴あな」に連れ去る計画を書いた、同情に満ちた分厚ぶあつい手紙が三通来ていることだろう。そう思うと気が休まり、眠気がさまざまな想おもいを包み込んでいった。