しかし、ヘドウィグは次の朝戻ってはこなかった。ハリーはトイレに行く以外は一日中部屋に閉じこもっていた。ペチュニアおばさんが、その日三度、おじさんが三年前の夏に取りつけた猫用のくぐり戸から食事を入れてよこした。おばさんが部屋に近づくたびに、ハリーは「吼ほえメール」のことを聞き出そうとしたが、おばさんの答えときたら、石に聞いたほうがまだましだった。ダーズリー一家は、それ以外ハリーの部屋には近づかないようにしていた。無理やりみんなと一いっ緒しょにいて何になる、とハリーは思った。また言い争いをして、結局ハリーが腹を立て、違法いほうな魔法を使うのが落おちじゃないか。
そんなふうに丸三日が過ぎた。あるときは、イライラと気が昂たかぶり、何も手につかず、部屋をうろつきながら、自分がわけのわからない状況に悶もん々もんとしているのに、放ほったらかしにしているみんなに腹を立てた。そうでないときは、まったくの無気力に襲おそわれ、一時間もベッドに横になったままぼんやり空くうを見つめ、魔法省の尋じん問もんを思い、恐きょう怖ふに苛さいなまれていた。
不利な判はん決けつが出たらどうしよう 本当に学校を追われ、杖つえを真っ二つに折られたら 何をしたら、どこに行ったらいいんだろう ここに帰ってずっとダーズリー一家と暮らすことなんてできない。自分が本当に属ぞくしている別な世界を知ってしまったいま、それはできない。シリウスの家に引っ越すことができるだろうか 一年前、やむなく魔法省の手から逃とう亡ぼうする前、シリウスが誘さそってくれた。まだ未み成せい年ねんのハリーが、そこに一人で住むことを許されるだろうか それとも、どこに住むということも判決で決まるのだろうか 国こく際さい機き密みつ保ほ持じ法ほうに違反いはんしたのは、アズカバンの独どく房ぼう行きになるほどの重じゅう罪ざいなのだろうか ここまで考えると、ハリーはいつもベッドから滑すべり降おり、また部屋をうろうろしはじめるのだった。