みんながまだ自分を見つめていることをはっきり感じながら、ハリーは階段を下りた。下りながら杖つえをジーンズの尻しりポケットにしまおうとした。
「おい、そんなところに杖をしまうな」マッド‐アイが怒ど鳴なった。「火が点ついたらどうする おまえさんよりちゃんとした魔法使いが、それでケツを失なくしたんだぞ」
「ケツをなくしたって、いったい誰」紫むらさきの髪かみの魔女が興きょう味み津しん々しんでマッド‐アイに尋たずねた。
「誰でもよかろう。とにかく尻ポケットから杖を出しておくんだ」マッド‐アイが唸った。「杖の安全の初歩だ。近ごろは誰も気にせん」
マッド‐アイはコツッコツッとキッチンに向かった。
「それに、わしはこの目でそれを見たんだからな」
魔女が「やれ、やれ」というふうに天井を見上げたので、マッド‐アイがイライラしながらそうつけ加えた。
ルーピンは手を差し伸べてハリーと握あく手しゅした。
「元気か」ルーピンはハリーをじっと覗のぞき込こんだ。
「ま、まあ……」
ハリーは、これが現実だとはなかなか信じられなかった。四週間も何もなかった。プリベット通りからハリーを連れ出す計画の気配さえなかったのに、突然、あたりまえだという顔で、まるで前々から計画されていたかのように、魔法使いが束たばになってこの家にやってきた。ハリーはルーピンを囲んでいる魔法使いたちをざっと眺ながめた。みんな貪むさぼるようにハリーを見たままだ。ハリーは、この四日間髪を梳とかしていなかったことが気になった。
「僕は――みなさんは、ダーズリー一家が外出していて、本当にラッキーだった……」ハリーが口ごもった。
「ラッキー へフハッ」紫の髪の魔女が言った。「わたしよ。やつらを誘おびき出したのは。マグルの郵ゆう便びんで手紙を出して、『全ぜん英えい郊こう外がい芝生しばふ手て入いれコンテスト』で最さい終しゅう候こう補ほに残ったって書いたの。いまごろ授じゅ賞しょう式しきに向かってるわ……そう思い込んで」
「全ぜん英えい郊こう外がい芝生しばふ手て入いれコンテスト」がないと知ったときの、バーノンおじさんの顔がチラッとハリーの目に浮かんだ。