「出発するんだね」ハリーが聞いた。「すぐに」
「まもなくだ」ルーピンが答えた。「安全確かく認にんを待っているところだ」
「どこに行くの 『隠かくれ穴あな』」ハリーはそうだといいなと思った。
「いや、『隠れ穴』じゃない。違う」
ルーピンがキッチンからハリーを手招てまねきしながら言った。魔法使いたちが小さな塊かたまりになってそのあとに続いた。まだハリーをしげしげと見ている。
「あそこは危険すぎる。本部は見つからないところに設置せっちした。しばらくかかったがね……」
マッド‐アイ・ムーディはキッチン・テーブルの前に腰掛こしかけ、携けい帯たい用よう酒さか瓶びんからグビグビ飲んでいた。魔法の目が四し方ほう八はっ方ぽうにくるくる動き、ダーズリー家のさまざまな便利な台所用品をじっくり眺ながめていた。
「ハリー、この方かたはアラスター・ムーディだ」ルーピンがムーディを指して言った。
「ええ、知ってます」ハリーは気まずそうに言った。一年もの間知っていると思っていた人を、あらためて紹しょう介かいされるのは変な気持だった。
「そして、こちらがニンファドーラ――」
「リーマス、わたしのことニンファドーラって呼んじゃだめ」若い魔女が身震みぶるいして言った。
「トンクスよ」
「ニンファドーラ・トンクスだ。苗みょう字じのほうだけを覚えてほしいそうだ」ルーピンが最後まで言った。
「母親が『かわいい水の精せいニンファドーラ』なんてバカげた名前をつけたら、あなただってそう思うわよ」トンクスがブツブツ言った。
「それからこちらは、キングズリー・シャックルボルト」
ルーピンは、背の高い黒人の魔法使いを指していた。紹介された魔法使いが頭を下げた。
「エルファイアス・ドージ」ゼイゼイ声の魔法使いがこくんと頷うなずいた。
「ディーダラス・ディグル――」
「以前にお目にかかりましたな」興こう奮ふんしやすい性た質ちのディグルは、紫むらさき色いろのシルクハットを落として、キーキー声で挨あい拶さつした。
「エメリーン・バンス」エメラルド・グリーンのショールを巻いた、堂どう々どうとした魔女が、軽く首を傾かしげた。
「スタージス・ポドモア」顎あごの角ばった、麦わら色の豊かな髪かみの魔法使いがウィンクした。
「そしてヘスチア・ジョーンズ」ピンクの頬ほおをした黒髪の魔女が、トースターの隣となりで手を振ふった。