紹介されるたびに、ハリーは一人ひとりにぎこちなく頭を下げた。みんなが何か自分以外のものを見てくれればいいのにと思った。突然舞台ぶたいに引っ張り出されたような気分だった。どうしてこんなに大勢いるのかも疑問だった。
「君を迎むかえにいきたいと名乗りを上げる人が、びっくりするほどたくさんいてね」
ルーピンが、ハリーの心を読んだかのように、口の両端をひくひくさせながら言った。
「うむ、まあ、多いに越したことはない」ムーディが暗い顔で言った。「ポッター、わしらは、おまえの護衛ごえいだ」
「私たちはいま、出発しても安全だという合図を待っているところなんだが」ルーピンがキッチンの窓に目を走らせながら言った。「あと十五分ほどある」
「すっごく清せい潔けつなのね、ここのマグルたち。ね」
トンクスと呼ばれた魔女が、興きょう味み深ぶかげにキッチンを見回して言った。
「わたしのパパはマグル生まれだけど、とってもだらしないやつで。魔法使いもおんなじだけど、人によるのよね」
「あ――うん」ハリーが言った。「あの――」ハリーはルーピンのほうを見た。「いったい何が起こってるんですか 誰からも何にも知らされない。いったいヴォル――」
何人かがシーッと奇き妙みょうな音を出した。ディーダラス・ディグルはまた帽子ぼうしを落とし、ムーディは「黙だまれ」と唸うなった。
「えっ」ハリーが言った。
「ここでは何も話すことができん。危険すぎる」ムーディが普通の目をハリーに向けて言った。魔法の目は天井を向いたままだ。「くそっ」ムーディは魔法の目に手をやりながら、怒ったように毒どくづいた。「動きが悪くなった――あの碌ろくでなしがこの目を使ってからずっとだ」