「そうよ」トンクスは得意げだった。「キングズリーもそう。わたしより少し地位が高いけど。わたし、一年前に資格を取ったばかり。『隠おん密みつ追つい跡せき術じゅつ』では落第ぎりぎりだったの。おっちょこちょいだから。ここに到とう着ちゃくしたときわたしが一階でお皿を割った音、聞こえた」
「勉強で『七しち変化へんげ』になれるんですか」ハリーは荷造にづくりのことをすっかり忘れ、姿勢しせいを正してトンクスに聞いた。
トンクスがクスクス笑った。
「その傷きずをときどき隠したいんでしょ ン」
トンクスは、ハリーの額ひたいの稲いな妻ずま形がたの傷に目を止めた。
「うん、そうできれば」ハリーは顔を背そむけて、モゴモゴ言った。誰かに傷をじろじろ見られるのはいやだった。
「習しゅう得とくするのは難むずかしいわ。残念ながら」トンクスが言った。「『七変化』って、めったにいないし、生まれつきで、習得するものじゃないのよ。魔法使いが姿を変えるには、だいたい杖つえか魔法薬を使うわ。でも、こうしちゃいられない。ハリー、わたしたち、荷造りしなきゃいけないんだった」トンクスはごちゃごちゃ散らかった床を見回し、気が咎とがめるように言った。
「あ――うん」ハリーは本をまた数すう冊さつ拾ひろい上げた。
「バカね。もっと早いやり方があるわ。わたしが――『パック 詰つめろ』」トンクスは杖で床を大きく掃はらうように振りながら叫さけんだ。
本も服も、望ぼう遠えん鏡きょうも秤はかりも全部空中に舞まい上がり、トランクの中にゴチャゴチャに飛び込んだ。
「あんまりすっきりしてないけど」トンクスはトランクに近づき、中のごたごたを見下ろしながら言った。「ママならきちんと詰つめるコツを知ってるんだけどね――ママがやると、ソックスなんかひとりでに畳たたまれてるの――でもわたしはママのやり方を絶対マスターできなかった――振り方はこんなふうで――」トンクスは、もしかしたらうまくいくかもしれないと杖を振った。
ハリーのソックスが一つ、わずかにゴニョゴニョ動いたが、またトランクのごたごたの上にポトリと落ちた。