「明るい夜だ」魔法の目で空を入にゅう念ねんに調べながら、ムーディが呻うめいた。「もう少し雲で覆おおわれていればよかったのだが。よし、おまえ」ムーディが大声でハリーを呼んだ。「わしらはきっちり隊たい列れつを組んで飛ぶ。トンクスはおまえの真ん前だ。しっかりあとに続け。ルーピンはおまえの下をカバーする。わしは背後にいる。ほかの者はわしらの周囲を旋せん回かいする。何事があっても隊列を崩くずすな。わかったか 誰か一人が殺されても――」
「そんなことがあるの」ハリーが心配そうに聞いたが、ムーディは無む視しした。
「――ほかの者は飛び続ける。止まるな。列を崩すな。もし、やつらがわしらを全ぜん滅めつさせておまえが生き残ったら、ハリー、後こう発はつ隊たいが控ひかえている。東に飛び続けるのだ。そうすれば後発隊が来る」
「そんなに威勢いせいのいいこと言わないでよ、マッド‐アイ。それじゃハリーが、わたしたちが真しん剣けんにやってないみたいに思うじゃない」
トンクスが、自分の箒ほうきからぶら下がっている固こ定てい装そう置ちに、ハリーのトランクとヘドウィグの籠かごを括くくりつけながら言った。
「わしは、この子に計画を話していただけだ」ムーディが唸うなった。「わしらの仕事はこの子を無事本部へ送り届けることであり、もしわしらが使命しめい途と上じょうで殉じゅん職しょくしても――」
「誰も死にはしませんよ」キングズリー・シャックルボルトが、人を落ち着かせる深い声で言った。
「箒に乗れ。最初の合図が上がった」ルーピンが空を指した。
ずっとずっと高い空に、星に交まじって、明るい真まっ赤かな火花が噴ふん水すいのように上がっていた。それが杖から出る火花だと、ハリーにはすぐわかった。ハリーは右足を振り上げてファイアボルトに跨またがり、しっかりと柄えを握にぎった。柄が微かすかに震ふるえるのを感じた。また空に飛び立てるのを、ハリーと同じく待ち望んでいるかのようだった。
「第二の合図だ。出発」
ルーピンが大声で号令した。今度は緑の火花が、真上に高々と噴ふき上げていた。