急ぎ足にやってくる足音がして、ホールの一番奥の扉とびらからロンの母親のウィーズリーおばさんが現れた。急いで近づきながら、おばさんは笑顔で歓迎かんげいしていた。しかしハリーは、おばさんが前に会ったときより痩やせて青白い顔をしているのに気づいた。
「まあ、ハリー、また会えてうれしいわ」囁ささやくようにそう言うと、おばさんは肋あばら骨ぼねが軋きしむほど強くハリーを抱き締しめ、それから両腕を伸ばして、ハリーを調べるかのようにまじまじと眺ながめた。「痩せたわね。ちゃんと食べさせなくちゃ。でも残念ながら、夕食まではもうちょっと待たないといけないわ」
おばさんはハリーの後ろの魔法使いの一団に向かって、急せかすように囁いた。
「あの方かたがいましがたお着きになって、会議が始まっていますよ」
ハリーの背後で魔法使いたちが興こう奮ふんと関心かんしんでざわめき、次々とハリーの脇わきを通り過ぎて、ウィーズリーおばさんがさっき出てきた扉へと入って行った。ハリーはルーピンについて行こうとしたが、おばさんが引き止めた。
「だめよ、ハリー。騎き士し団だんのメンバーだけの会議ですからね。ロンもハーマイオニーも上の階にいるわ。会議が終るまで一いっ緒しょにお待ちなさいな。それからお夕食よ。それと、ホールでは声を低くしてね」おばさんは最後に急いで囁いた。
「どうして」
「何にも起こしたくないからですよ」
「どういう意味――」
「説明はあとでね。いまは急いでるの。私も会議に参加することになっているから――あなたの寝るところだけを教えておきましょう」
唇くちびるにシーッと指を当て、おばさんは先に立って、虫食いだらけの長い両開きカーテンの前を、抜ぬき足差さし足で通った。その裏にはまた別の扉があるのだろうとハリーは思った。トロールの足を切って作ったのではないかと思われる巨大な傘かさ立ての脇をすり抜け、暗い階段を上り、萎しなびた首が掛かった飾かざり板がずらりと並ぶ壁の前を通り過ぎた。よく見ると、首は屋敷やしきしもべ妖よう精せいのものだった。全員、なんだか豚ぶたのような鼻をしていた。