一歩進むごとに、ハリーはますますわけがわからなくなっていた。闇やみも闇、大闇の魔法使いの家のようなところで、いったいみんな何をしているのだろう。
「ウィーズリーおばさん、どうして――」
「ロンとハーマイオニーが全部説明してくれますよ。私はほんとに急がないと」おばさんは上うわの空で囁いた。
「ここよ――」二人は二つ目の踊おどり場ばに来ていた。「――あなたのは右側のドア。会議が終ったら呼びますからね」
そしておばさんは、また急いで階段を下りて行った。
ハリーは薄汚うすよごれた踊おどり場ばを歩いて、寝室しんしつのドアの取っ手を回した。取っ手は蛇へびの頭の形をしていた。ドアが開いた。
ほんの一いっ瞬しゅん、ベッドが二つ置かれ、天井の高い陰気いんきな部屋が見えた。次の瞬しゅん間かん、ホッホッという大きな囀さえずりと、それより大きな叫さけび声が聞こえ、ふさふさした髪かみの毛でハリーは完全に視界しかいを覆おおわれてしまった。ハーマイオニーがハリーに飛びついて、ほとんど押し倒しそうになるほど抱き締しめたのだ。一方いっぽう、ロンのチビふくろうのピッグウィジョンは、興こう奮ふんして、二人の頭上をブンブン飛び回っていた。
「ハリー ロン、ハリーが来たわ。ハリーが来たのよ 到とう着ちゃくした音が聞こえなかったわ ああ、元気なの 大だい丈じょう夫ぶなの 私たちのこと、怒ってた 怒ってたわよね。私たちの手紙が役に立たないことは知ってたわ――だけど、あなたに何にも教えてあげられなかったの。ダンブルドアに、教えないことを誓ちかわせられて。ああ、話したいことがいっぱいあるわ。あなたもそうでしょうね。――吸魂鬼ディメンターですって それを聞いたとき――それに魔法省の尋じん問もんのこと――とにかくひどいわ。私、すっかり調べたのよ。魔法省はあなたを退学にできないわ。できないのよ。『未み成せい年ねん魔法使いの妥当だとうな制限せいげんに関する法令ほうれい』で、生命を脅おびやかされる状況においては魔法の使用が許されることになってるの――」
「ハーマイオニー、ハリーに息ぐらいつかせてやれよ」ハリーの背後で、ロンがニヤッと笑いながらドアを閉めた。一ヵ月見ないうちに、ロンはまた十数センチも背が伸びたようで、これまでよりずっとひょろひょろのっぽに見えた。しかし、高い鼻、真まっ赤かな髪かみの毛とそばかすは変わっていない。