ハーマイオニーは、にこにこしながらハリーを放はなした。ハーマイオニーが言葉を続けるより早く、柔らかいシューッという音とともに、何か白いものが黒っぽい洋よう箪だん笥すの上から舞まい降おりて、そっとハリーの肩に止まった。
「ヘドウィグ」
白ふくろうは嘴くちばしをカチカチ鳴らし、ハリーの耳をやさしく噛かんだ。ハリーはヘドウィグの羽を撫なでた。
「このふくろう、ずっとイライラしてるんだ」ロンが言った。「この前手紙を運んできたとき、僕たちのこと突つっついて半殺しの目に遭あわせたぜ。これ見ろよ――」
ロンは右手の人差し指をハリーに見せた。もう治なおりかかってはいたが、たしかに深い切り傷きずだ。
「へえ、そう」ハリーが言った。「悪かったね。だけど、僕、答えがほしかったんだ。わかるだろ――」
「そりゃ、僕らだってそうしたかったさ」ロンが言った。「ハーマイオニーなんか、心配で気が狂いそうだった。君が、何のニュースもないままで、たった一人でいたら、何かばかなことをするかもしれないって、そう言い続けてたよ。だけどダンブルドアが僕たちに――」
「――僕に何も言わないって誓ちかわせた」ハリーが言った。「ああ、ハーマイオニーがさっきそう言った」
氷のように冷たいものがハリーの胃の腑ふに溢あふれ、二人の親友に会って胸の中に燃え上がっていた暖あたたかな光を消した。突然――一ヵ月もの間あんなに二人に会いたかったのに――ハリーは、ロンもハーマイオニーも自分を独ひとりにしてくれればいいのにと思った。
張りつめた沈ちん黙もくが流れた。ハリーは二人の顔を見ずに、機械的にヘドウィグを撫なでていた。
「それが最さい善ぜんだとお考えになったのよ」ハーマイオニーが息を殺して言った。「ダンブルドアが、ってことよ」
「ああ」ハリーはハーマイオニーの両手にもヘドウィグの嘴くちばしの印があるのを見つけたが、それをちっとも気の毒に思わない自分に気づいた。
「僕の考えじゃ、ダンブルドアは、君がマグルと一いっ緒しょのほうが安全だと考えて――」ロンが話しはじめた。
「へー」ハリーは眉まゆを吊つり上げた。「君たちのどっちかが、夏休みに吸きゅう魂こん鬼きに襲おそわれたかい」
「そりゃ、ノーさ――だけど、だからこそ不ふ死し鳥ちょうの騎き士し団だんの誰かが、夏休み中君の跡あとを追つけてたんだ――」