この一ヵ月、積もりに積もった恨うらみつらみが溢あふれ出した。何もニュースがなかったことの焦あせり、みんなが一いっ緒しょにいたのに、ハリーだけが退のけ者だったことの痛み、監視かんしされていたのにそれを教えてもらえなかった怒り――自分でも半なかば恥はじていたすべての感情が、一気に堰せきを切って溢れ出した。ヘドウィグは大声に驚おどろいて飛び上がり、また洋よう箪だん笥すの上に舞まい戻った。ピッグウィジョンはびっくりしてピーピー鳴きながら、頭上をますます急きゅう旋せん回かいした。
「四年生のとき、いったい誰が、ドラゴンやスフィンクスや、ほかの汚いやつらを出し抜いた 誰があいつの復活を目もく撃げきした 誰があいつから逃げ遂おおせた 僕だ」
ロンは、度肝どぎもを抜かれて言葉も出ず、口を半分開けてその場に突つっ立っていた。ハーマイオニーは泣き出しそうな顔をしていた。
「だけど、何が起こってるかなんて、どうせ僕に知らせる必要ないよな 誰もわざわざ僕に教える必要なんてないものな」
「ハリー、私たち、教えたかったのよ。本当よ――」ハーマイオニーが口を開いた。
「それほど教えたいとは思わなかったんだよ。そうだろう そうじゃなきゃ、僕にふくろうを送ったはずだ。だけど、『ダンブルドアが君たちに誓ちかわせたから』――」
「だって、そうなんですもの――」
「四週間もだぞ。僕はプリベット通りに缶詰かんづめで、何がどうなってるのか知りたくて、ゴミ箱から新聞を漁あさってた――」
「私たち、教えてあげたかった――」
「君たち、さんざん僕を笑いものにしてたんだ。そうだろう みんな一緒に、ここに隠れて――」
「違うよ。まさか――」
「ハリー、ほんとにごめんなさい」ハーマイオニーは必死だった。目には涙が光っていた。
「あなたの言うとおりよ、ハリー――私だったら、きっとカンカンだわ」
ハリーは息を荒あららげたまま、ハーマイオニーを睨にらみつけた。それから二人から離はなれ、部屋を往いったり来たりした。ヘドウィグは洋箪笥の上で、不ふ機き嫌げんにホーと鳴いた。しばらくみんな黙だまりこくった。ハリーの足下あしもとで、床が呻うめくように軋きしむ音だけがときどき沈ちん黙もくを破った。