ハリーはフンと鼻を鳴らした。そしてロンとハーマイオニーのほうを絶対見ないようにしながら、また部屋を往いったり来たりしはじめた。「それじゃ、君たちはここで何してたんだい 会議に入れないなら」ハリーは問い詰つめた。「二人とも忙いそがしいって言ってたろう」
「そうよ」ハーマイオニーがすぐ答えた。「この家を除染じょせんしていたの。何年も空家あきやだったから、いろんなものが巣す食くっているのよ。厨ちゅう房ぼうはなんとかきれいにしたし、寝室しんしつもだいたいすんだわ。それから、客きゃく間まに取りかかるのが明日――ああーっ」
バシッバシッと大きな音がして、ロンの双子ふたごの兄、フレッドとジョージが、どこからともなく部屋の真ん中に現れた。ピッグウィジョンはますます激はげしく囀さえずり、洋よう箪だん笥すの上のヘドウィグのそばにブーンと飛んで行った。
「いい加減かげんにそれやめて」ハーマイオニーが諦あきらめ声で言った。双子ふたごはロンと同じ鮮あざやかな赤毛あかげだが、もっとがっちりして背は少し低い。
「やあ、ハリー」ジョージがハリーににっこりした。「君の甘ーい声が聞こえたように思ったんでね」
「怒りたいときはそんなふうに抑おさえちゃだめだよ、ハリー。全部吐はいっちまえ」フレッドもにっこりしながら言った。「百キロぐらい離はなれたとこに、君の声が聞こえなかった人が一人ぐらいいたかもしれないじゃないか」
「君たち二人とも、それじゃ、『姿すがた現あらわし』テストに受かったんだね」ハリーは不ふ機き嫌げんなまま言った。
「優等ゆうとうでさ」フレッドが言った。手には何やら長い薄うす橙だいだい色いろのひもを持っている。
「階段を下りたって、三十秒も余計よけいにかかりゃしないのに」ロンが言った。
「弟よ、『時はガリオンなり』さ」フレッドが言った。「とにかく、ハリー、君の声が受信じゅしんを妨さまたげているんだ。『伸のび耳みみ』のね」
ハリーがちょっと眉まゆを吊つり上げたので、フレッドが説明をつけ加え、ひもを掲かかげて見せた。ハリーは、そのひもの先が踊おどり場ばに伸びているのを見た。
「下で何してるのか、聞こうとしてたんだ」
「気をつけたほうがいいぜ」ロンが「耳」を見つめながら言った。「ママがまたこれを見つけたら……」
「その危き険けんを冒おかす価値ありだ。いま重要会議をしてる」フレッドが言った。
ドアが開いて、長いふさふさした赤毛が現れた。