「かなり悪質ね、はっきり言って」ハーマイオニーは無理に平静へいせいを装よそおった声で言った。「リータの記事を利用してるの」
「だけど、リータはもうあの新聞に書いていないんだろ」
「ええ、書いてないわ。約束を守ってる――選択せんたくの余よ地ちはないけどね」ハーマイオニーは満足そうにつけ加えた。「でも、リータが書いたことが、新聞がいまやろうとしていることの足掛あしがかりになっているの」
「やるって、何を」ハリーは焦あせった。
「あのね、リータは、あなたがあちこちで失神しっしんするとか、傷きずが痛むと言ったとか書いたわよね」
「ああ」リータ・スキーターが自分について書いた記事を、ハリーがそんなにすぐに忘れられるわけがない。
「新聞は、そうね、あなたが思い込みの激はげしい目立ちたがり屋で、自分を悲劇ひげきのヒーローだと思っている、みたいな書き方をしているの」ハーマイオニーは一気に言い切った。こういう事実は大急ぎで聞くほうが、ハリーにとって不ふ快かい感かんが少ないとでも言うかのようだった。「新聞はあなたを嘲あざける言葉を、しょっちゅう潜り込ませるの。信じられないような突飛とっぴな記事の場合だと、『ハリー・ポッターにふさわしい話』だとか、誰かがおかしな事故に遭あうと、『この人の額ひたいに傷が残らないように願いたいものだ。そうしないと、次に我々はこの人を拝おがめと言われかねない』――」
「僕は誰にも拝んでほしくない――」ハリーが熱くなってしゃべりはじめた。
「わかってるわよ」ハーマイオニーは、びくっとした顔で慌あわてて言った。
「私にはわかってるのよ、ハリー。だけど新聞が何をやってるか、わかるでしょう あなたのことを、まったく信用できない人間に仕し立たて上げようとしてる。ファッジが糸を引いているわ。そうに決まってる。一般の魔法使いに、あなたのことをこんなふうに思い込ませようとしてるのよ――愚おろかな少年で、お笑い種ぐさ。ありえないバカげた話をする。なぜなら、有名なのが得意とくいで、ずっと有名でいたいから」
「僕が頼んだわけじゃない――望んだわけじゃない――ヴォルデモートは僕の両親を殺したんだ」ハリーは急せき込んだ。「僕が有名になったのは、あいつが僕の家族を殺して、僕を殺せなかったからだ 誰がそんなことで有名になりたい みんなにはわからないのか 僕は、あんなことが起こらなかったらって――」
「わかってるわ、ハリー」ジニーが心から言った。