「あのさ……」ハリーがぼそりと言った。しかし、ロンは首を振り、ハーマイオニーは静かに言った。「ハリー、あなたが怒ることはわかっていた。無理もないわ。でも、わかってほしい。私たち、ほんとに努力したのよ。ダンブルドアを説得するのに――」
「うん、わかってる」ハリーは言葉少なに答えた。
ハリーは、校長がかかわらない話題はないかと探した。ダンブルドアのことを考えるだけで、またもや怒りで腸はらわたが煮にえくり返る思いがするからだ。
「クリーチャーって誰」ハリーが聞いた。
「ここに棲すんでる屋敷やしきしもべ妖よう精せい」ロンが答えた。「いかれぽんちさ。あんなの見たことない」
ハーマイオニーがロンを睨にらんだ。
「いかれぽんちなんかじゃないわ、ロン」
「あいつの最大の野望は、首を切られて、母親と同じように楯たてに飾かざられることなんだぜ」ロンが焦じれったそうに言った。「ハーマイオニー、それでもまともかい」
「それは――それは、ちょっと変だからって、クリーチャーのせいじゃないわ」
ロンはやれやれという目でハリーを見た。
「ハーマイオニーはまだ反へ吐どを諦あきらめてないんだ」
「反吐スピューじゃないってば」ハーマイオニーが熱くなった。「エス・ピー・イー・ダブリュー、しもべ妖精福ふく祉し振しん興こう協きょう会かいです。それに、私だけじゃないのよ。ダンブルドアもクリーチャーにやさしくしなさいっておっしゃってるわ」
「はい、はい」ロンが言った。「行こう。腹ぺこだ」
ロンは先頭に立ってドアから踊おどり場ばに出た。しかし、三人が階段を下りる前に――。
「ストップ」ロンが声をひそめ、片腕かたうでを伸ばして、ハリーとハーマイオニーを押し止めた。
「みんな、まだホールにいるよ。何か聞けるかもしれない」