三人は慎しん重ちょうに階段の手摺てすりから覗のぞき込こんだ。階下の薄暗うすぐらいホールは、魔法使いと魔女たちで一いっ杯ぱいだった。ハリーの護ご衛えい隊たいもいた。興こう奮ふんして囁ささやき合っている。グループの真ん中に、脂あぶらっこい黒くろ髪かみで鼻の目立つ魔法使いが見えた。ホグワーツでハリーが一番嫌いな、スネイプ先生だ。ハリーは階段の手摺から身を乗り出した。スネイプが不ふ死し鳥ちょうの騎き士し団だんで何をしているのかがとても気になった……。
細い薄うす橙だいだい色いろのひもが、ハリーの目の前を下りて行った。見上げると、フレッドとジョージが上の踊り場にいて、下の真っ黒な集団に向かってそろりそろりと「伸のび耳みみ」を下ろしていた。しかし次の瞬しゅん間かん、集団は全員、玄げん関かんの扉とびらに向かい、姿が見えなくなった。
「チッキショー」ハリーは、「伸び耳」を引き上げながらフレッドが小声で言うのを聞いた。
玄関の扉が開き、また閉まる音が聞こえた。
「スネイプは絶対ここで食事しないんだ」ロンが小声でハリーに言った。「ありがたいことにね。さあ」
「それと、ホールでは声を低くするのを忘れないでね、ハリー」ハーマイオニーが囁ささやいた。
しもべ妖よう精せいの首がずらりと並ぶ壁かべの前を通り過ぎるとき、ルーピン、ウィーズリーおばさん、トンクスが玄げん関かんの戸口にいるのが見えた。みんなが出て行ったあとで、魔法の錠じょう前まえや閂かんぬきをいくつも掛かけているところだった。
「厨ちゅう房ぼうで食べますよ」階段下で三人を迎むかえ、ウィーズリーおばさんが小声で言った。「さあ、ハリー、忍び足でホールを横切って、ここの扉とびらから――」
バタッ。
「トンクス」おばさんがトンクスを振り返り、呆あきれたように叫さけんだ。
「ごめん」トンクスは情なさけない声を出した。床に這はいつくばっている。「このバカバカしい傘かさ立てのせいよ。躓つまずいたのはこれで二度目――」
あとの言葉は、耳を劈つんざき血も凍こおる、恐ろしい叫びに呑のみ込こまれてしまった。