「まったくもう」ウィーズリーおばさんが叫さけんだ。「そんな必要ないでしょっ――もうたくさん――おまえたち、もう魔法を使ってもいいからって、何でもかんでもいちいち杖つえを振る必要はないのっ」
「僕たち、ちょいと時間を節約せつやくしようとしたんだよ」フレッドが急いで進み出て、テーブルからパンナイフを抜き取った。「ごめんよ、シリウス――わざとじゃないぜ――」
ハリーもシリウスも笑っていた。マンダンガスは椅子から仰向あおむけに転げ落ちていたが、悪態あくたいをつきながら立ち上がった。クルックシャンクスはシャーッと怒り声を出して食しょっ器き棚だなの下に飛び込こみ、真っ暗な所で、大きな黄色い目をギラつかせていた。
「おまえたち」シチューの鍋をテーブルの真ん中に戻しながら、ウィーズリーおじさんが言った。「母さんが正しい。おまえたちも成人したんだから、責任感というものを見せないと――」
「兄さんたちはこんな問題を起こしたことがなかったわ」ウィーズリーおばさんが二人を叱しかりつけながら、バタービールの新しい広口ジャーをテーブルにドンと叩たたきつけた。中身がさっきと同じぐらいこぼれた。「ビルは、一メートルごとに『姿すがた現あらわし』する必要なぞ感じなかったわ チャーリーは、何にでも見み境さかいなしに呪じゅ文もんをかけたりしなかった パーシーは――」
突然おばさんの言葉が途と切ぎれ、息を殺し、恐こわ々ごわウィーズリーおじさんの顔を見た。おじさんは、急に無表情になっていた。
「さあ、食べよう」ビルが急いで言った。
「モリー、おいしそうだよ」おばさんのために皿にシチューをよそい、テーブル越しにさし出しながら、ルーピンが言った。
しばらくの間、皿やナイフ、フォークのカチャカチャ言う音や、みんながテーブルに椅子を引き寄せる音がするだけで、誰も話をしなかった。そして、ウィーズリーおばさんがシリウスに話しかけた。