「聞いたよ」ハリーは憤慨ふんがいした。「ロンとハーマイオニーに聞いた。でも、二人が言ったんだ。僕たちは騎き士し団だんに入れてもらえないから、だから――」
「二人の言うとおりよ」ウィーズリーおばさんが言った。「あなたたちはまだ若すぎるの」
おばさんは背筋せすじをぴんと伸ばして椅子に掛けていた。椅子の肘掛ひじかけに置いた両手を固く握にぎり締しめ、眠気ねむけなどひとかけらも残っていない。
「騎士団に入っていなければ質問してはいけないと、いつからそう決まったんだ」シリウスが聞いた。「ハリーはあのマグルの家に一ヵ月も閉じ込められていた。何が起こったのかを知る権利がある――」
「ちょっと待った」ジョージが大声で遮さえぎった。
「なんでハリーだけが質問に答えてもらえるんだ」フレッドが怒ったように言った。
「僕たちだって、この一ヵ月、みんなから聞き出そうとしてきた。なのに、誰も何ひとつ教えてくれやしなかった」ジョージが言った。
「『あなたはまだ若すぎます。あなたは騎士団に入っていません』」フレッドが紛まぎれもなく母親の声だとわかる高い声を出した。「ハリーはまだ成人にもなってないんだぜ」
「騎士団が何をしているのか、君たちが教えてもらえなかったのは、わたしの責任じゃない」シリウスが静かに言った。「それは、君たちのご両親の決めたことだ。ところが、ハリーのほうは――」
「ハリーにとって何がいいのかを決めるのは、あなたではないわ」ウィーズリーおばさんが鋭するどく言った。いつもはやさしいおばさんの顔が、険けわしくなっていた。「ダンブルドアがおっしゃったことを、よもやお忘れじゃないでしょうね」
「どのお言葉でしょうね」シリウスは礼儀れいぎ正しかったが、戦いに備そなえた男の雰ふん囲い気きを漂ただよわせていた。
「ハリーが知る必要があること以外は話してはならない、とおっしゃった言葉です」ウィーズリーおばさんは最初の件くだりをことさらに強調した。