「何が問題かわかるだろう」ルーピンが言った。「魔法省が、ヴォルデモートのことは何も心配する必要がないと主しゅ張ちょうし続けるかぎり、やつが戻ってきたと説得せっとくするのは難しい。そもそも、そんなことは誰も信じたくないんだから。その上、魔法省は『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』に圧力をかけて、いわゆる『ダンブルドアのガセネタ』はいっさい報道ほうどうしないようにさせている。だから、一般の魔法族は、何が起こっているかまったく気がつきもしない。『死し喰くい人びと』にとっては、それが勿怪もっけの幸いで、『服ふく従じゅうの呪のろい』をかけようとすれば、いいカモになる」
「でも、みんなが知らせているんでしょう」ハリーは、ウィーズリーおじさん、シリウス、ビル、マンダンガス、ルーピン、トンクスの顔を見回した。「みんなが、あいつが戻ってきたって、知らせてるんでしょう」
全員が、冗じょう談だん抜きの顔で微笑ほほえんだ。
「さあ、わたしは気の触ふれた大たい量りょう殺さつ人じん者しゃだと思われているし、魔法省がわたしの首に一万ガリオンの懸けん賞しょう金きんを賭かけているとなれば、街まちに出てビラ配りを始めるわけにもいかない。そうだろう」シリウスが焦じり焦りしながら言った。
「私はとくれば、魔法族の間ではとくに夕食に招まねきたい客じゃない」ルーピンが言った。
「狼おおかみ人にん間げんにつきものの職しょく業ぎょう上じょうの障しょう害がいでね」
「トンクスもアーサーも、そんなことを触れ回ったら、職を失うだろう」シリウスが言った。
「それに、魔法省内にスパイを持つことは、我々にとって大事なことだ。なにしろ、ヴォルデモートのスパイもいることは確かだからね」
「それでもなんとか、何人かを説得できた」ウィーズリーおじさんが言った。「このトンクスもその一人――前回は不ふ死し鳥ちょうの騎き士し団だんに入るには若すぎたんだ。それに、闇やみ祓ばらいを味方につけるのは大いに有益ゆうえきだ――キングズリー・シャックルボルトもまったく貴き重ちょうな財産ざいさんだ。シリウスを追跡ついせきする責任者でね。だから、魔法省に、シリウスがチベットにいると吹ふい聴ちょうしている」