「でも、ヴォルデモートが戻ってきたというニュースを、この中の誰も広めてないのなら――」ハリーが言いかけた。
「一人もニュースを流していないなんて言ったか」シリウスが遮さえぎった。「ダンブルドアが苦く境きょうに立たされているのはなぜだと思う」
「どういうこと」ハリーが聞いた。
「連中はダンブルドアの信用を失墜しっついさせようとしている」ルーピンが言った。「先週の『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』を見なかったかね 国こく際さい魔ま法ほう使つかい連れん盟めいの議ぎ長ちょう職しょくを投票で失った、という記事だ。老いぼれて判断力を失ったからと言うんだが、本当のことじゃない。ヴォルデモートが復活したという演説えんぜつをしたあとで、魔法省の役人たちの投票で職しょくを追われた。ウィゼンガモット法廷ほうてい――魔法使いの最さい高こう裁さいだが――そこの主しゅ席せき魔ま法ほう戦せん士しからも降おろされた。それに、勲くん一いっ等とうマーリン勲くん章しょうを剥奪はくだつする話もある」
「でも、ダンブルドアは蛙かえるチョコレートのカードにさえ残れば、何にも気にしないって言うんだ」ビルがニヤッとした。
「笑い事じゃない」ウィーズリーおじさんがビシッと言った。「ダンブルドアがこんな調子で魔法省に楯突たてつき続けていたら、アズカバン行きになるかもしれない。ダンブルドアが幽閉ゆうへいされれば、我々としては最悪の事態じたいだ。ダンブルドアが立ちはだかり、企たくらみを見抜いているとやつが知っていればこそ、『例のあの人』も慎しん重ちょうになる。ダンブルドアが取り除のぞかれたとなれば――そう、『例のあの人』にもはや邪じゃ魔ま者ものはいない」
「でも、ヴォルデモートが『死し喰くい人びと』をもっと集めようとすれば、どうしたって復活したことが表ざたになるでしょう」ハリーは必死の思いだった。
「ハリー、ヴォルデモートは魔法使いの家を個こ別べつ訪ほう問もんして、正面玄げん関かんをノックするわけじゃない」シリウスが言った。「騙だまし、呪のろいをかけ、恐きょう喝かつする。隠おん密みつ工作は手て馴なれたものだ。いずれにせよ、やつの関心かんしんは、配下はいかを集めることだけじゃない。ほかにも求めているものがある。やつがまったく極秘ごくひで進めることができる計画だ。いまはそういう計画に集中している」