「ママは僕たちのこと全然信用してないんだ」ロンが悔くやしそうに言った。
ハリーはとうてい眠れそうにないと思った。今夜は考えることがあまりにいろいろ起こって、何時間も悶々もんもんとして目を覚ましていることだろう。ロンと話を続けたかったが、ウィーズリーおばさんがまた床を軋ませながら階段を下りて行く音がした。おばさんが行ってしまうと、何か別なものが階段を上がってくる音をはっきり聞いた……それは、肢あしが何本もある生き物で、カサコソと寝室しんしつの外を駆かけ回っている。魔ま法ほう生せい物ぶつ飼し育いく学がくの先生、ハグリッドの声が聞こえる。「どうだ、美しいじゃねえか、え ハリー 今学期は、武器を勉強するぞ……」ハリーはその生き物が頭に大砲たいほうを持っていて、自分のほうを振り向いたのを見た……ハリーは身をかわした……。
次に気がついたときは、ハリーはベッドの中でぬくぬくと丸まっていた。ジョージの大声が部屋中に響ひびいた。
「お袋ふくろが起きろって言ってるぞ。朝食は厨ちゅう房ぼうだ。それから客きゃく間まに来いってさ。ドクシーが、思ったよりどっさりいるらしい。それに、ソファーの下に死んだパフスケインの巣すを見つけたんだって」
三十分後、急いで服を着て朝食をすませたハリーとロンは、客間に入って行った。二階にある天井の高い、長い部屋で、オリーブグリーンの壁かべは汚らしいタペストリーで覆おおわれていた。絨じゅう毯たんは、誰かが一歩踏ふみ締しめるたびに、小さな雲のような埃ほこりを巻き上げた。モスグリーンの長いビロードのカーテンは、まるで姿の見えない蜂はちが群がっているかのようにブンブン唸うなっていた。その周りに、ウィーズリーおばさん、ハーマイオニー、ジニー、フレッド、ジョージが集まっていた。みんな鼻と口を布で覆って、奇き妙みょうな格好かっこうだ。手に手に、黒い液体えきたいが入った噴ふん射しゃ用ようノズルつきの瓶びんを持っている。