玄げん関かんのベルがまたカランカランと鳴った。全員の目がウィーズリーおばさんに集まった。
またしても、ブラック夫人の金切かなきり声ごえが階下から聞こえてきた。
「ここにいなさい」おばさんがネズミ袋をひっつかみ、きっぱりと言い渡した。「サンドイッチを持ってきますからね」
おばさんは部屋から出るとき、きっちりと扉とびらを閉めた。とたんに、みんな一斉いっせいに窓際まどぎわに駆かけ寄り、玄関の石段を見下ろした。赤あか茶ちゃ色いろのもじゃもじゃ頭のてっぺんと、積み上げた大おお鍋なべが、危なっかしげにふらふら揺ゆれているのが見えた。
「マンダンガスだわ」ハーマイオニーが言った。「大鍋をあんなにたくさん、どうするつもりかしら」
「安全な置き場所を探してるんじゃないかな」ハリーが言った。「僕を見張っているはずだったあの晩ばん、取とり引ひきしてたんだろ 胡う散さん臭くさい大鍋の」
「うん、そうだ」
フレッドが言ったとき、玄関の扉が開いた。マンダンガスがよっこらしょと大鍋を運び込み、窓からは見えなくなった。
「うへー、お袋ふくろはお気に召めさないぞ……」
フレッドとジョージは扉に近寄り、耳を澄すませた。ブラック夫人の悲鳴ひめいは止まっていた。
「マンダンガスがシリウスとキングズリーに話してる」フレッドが、しかめ面つらで耳をそばだてながら呟つぶやいた。「よく聞こえねえな……『伸のび耳みみ』の危き険けんを冒おかすか」
「その価値ありかもな」ジョージが言った。「こっそり上まで行って、一組ひとくみ取ってくるか――」
しかし、まさにその瞬しゅん間かん、階下で大だい音おん響きょうが炸裂さくれつし、「伸び耳」は用無しになった。ウィーズリーおばさんが声をかぎりに叫さけんでいるのが、全員にはっきり聞き取れた。
「ここは盗品とうひんの隠し場所じゃありません」
「お袋が誰かほかのやつを怒ど鳴なりつけるのを聞くのは、いいもんだ」
フレッドが満足げににっこりしながら、扉をわずかに開け、ウィーズリーおばさんの声がもっとよく部屋中に行き渡るようにした。
「気分が変わって、なかなかいい」
「――無責任もいいとこだわ。それでなくても、いろいろ大変なのに、その上あんたがこの家に盗品の大鍋を引きずり込むなんて――」
「あのバカども、お袋の調子を上げてるぜ」ジョージが頭を振り振り言った。「早いとこ矛先ほこさきを逸そらさないと、お袋ふくろさん、だんだん熱くなって何時間でも続けるぞ。しかも、ハリー、マンダンガスが君を見張っているはずだったのにドロンしてから、お袋はあいつを怒ど鳴なりたくて、ずっとうずうずしてたんだ――ほーら来た、またシリウスのママだ」
ウィーズリーおばさんの声は、ホールの肖しょう像ぞう画がの悲鳴ひめいと叫さけびの再開で掻かき消されてしまった。