ジョージは騒音を抑おさえようと、扉とびらを閉めかけたが、閉め切る前に屋敷やしき
ハリーは笑っていいやらどうやら、わからなかった。しもべ妖精は体を起こし、全員を憎々にくにくしげに見つめ、誰も自分の言うことが聞こえないと信じ切っているらしく、ブツブツ言い続けた。
「……それに、穢れた血め。ずうずうしく鉄てつ面めん皮ぴで立っている。ああ、奥様がお知りになったら、ああ、どんなにお嘆なげきか。それに、一人新顔しんがおの子がいる。クリーチャーは名前を知らない。ここで何をしてるのか クリーチャーは知らない……」
「こちら、ハリーよ、クリーチャー」ハーマイオニーが遠えん慮りょがちに言った。「ハリー・ポッターよ」
クリーチャーの濁にごった目がかっと見開かれ、前よりもっと早口に、怒り狂って呟つぶやいた。
「穢けがれた血が、クリーチャーに友達顔づらで話しかける。クリーチャーめがこんな連中と一いっ緒しょにいるところを奥様おくさまがご覧らんになったら、ああ、奥様はなんと仰おおせられることか――」
「ハーマイオニーを穢れた血なんて呼ぶな」ロンとジニーがカンカンになって同時に言った。
「いいのよ」ハーマイオニーが囁ささやいた。「正しょう気きじゃないのよ。何を言ってるのか、わかってないんだから――」
「甘いぞ、ハーマイオニー。こいつは、何を言ってるのかちゃーんとわかってるんだ」
いやなやつ、とクリーチャーを睨にらみながらフレッドが言った。
クリーチャーはハリーを見ながら、まだブツブツ言っていた。
「本当だろうか ハリー・ポッター クリーチャーには傷きず痕あとが見える。本当に違いない。闇やみの帝てい王おうを止とどめた男の子。どうやって止とどめたのか、クリーチャーは知りたい――」
「みんな知りたいさ、クリーチャー」フレッドが言った。
「ところで、いったい何の用だい」ジョージが聞いた。
クリーチャーの巨大な目が、さっとジョージに走った。
「クリーチャーめは掃除そうじをしております」クリーチャーがごまかした。
「見え透すいたことを」ハリーの後ろで声がした。
シリウスが戻ってきていた。戸口から苦々にがにがしげにしもべ妖よう精せいを睨にらみつけている。ホールの騒ぎは静まっていた。ウィーズリーおばさんとマンダンガスの議論ぎろんは、厨ちゅう房ぼうにもつれ込んだのだろう。
シリウスの姿を見ると、クリーチャーは身を躍おどらせ、バカ丁寧ていねいに頭を下げて、豚ぶたの鼻を床に押しつけた。