「弟はわたしよりもよい息子だった」シリウスが言った。「わたしはいつもそう言われながら育った」
「でも、死んでる」ハリーが言った。
「そう」シリウスが言った。「バカな奴やつだ……『死し喰くい人びと』に加わったんだ」
「嘘うそでしょう」
「おいおい、ハリー、これだけこの家を見れば、わたしの家族がどんな魔法使いだったか、いい加減かげんわかるだろう」シリウスは苛立いらだたしげに言った。
「ご――ご両親も『死喰い人』だったの」
「いや、違う。しかし、なんと、ヴォルデモートが正しい考え方をしていると思っていたんだ。魔法族の浄じょう化かに賛成だった。マグル生まれを排除はいじょし、純じゅん血けつの者が支配することにね。両親だけじゃなかった。ヴォルデモートが本ほん性しょうを現すまでは、ずいぶん多くの魔法使いが、やつの考え方が正しいと思っていた……そういう魔法使いは、やつが権力を得るために何をしようとしているかに気づくと、怖気おじけづいたんだがね。わたしの両親もはじめのうちは、やつらに加わったレギュラスのことを、まさに小さな英雄えいゆうだと思ったんだろう」
「弟さんは闇やみ祓ばらいに殺されたの」ハリーは遠えん慮りょがちに聞いた。
「いいや、違う」シリウスが言った。「違う。ヴォルデモートに殺された。というより、ヴォルデモートの命令で殺されたと言ったほうがいいかな。レギュラスはヴォルデモート自身が手を下くだすには小者こものすぎた。死んでからわかったことだが、弟はある程度ていどまで入り込こんだ後に、命令されて自分がやっていることに恐れをなし、身を引こうとした。まあしかし、ヴォルデモートに辞じ表ひょうを提てい出しゅつするなんていうわけにはいかない。一いっ生しょう涯がい仕つかえるか、さもなくば死だ」
「お昼よ」ウィーズリーおばさんの声がした。