おばさんは杖つえを高く掲かかげ、その杖つえ先さきに、サンドイッチとケーキを山盛やまもりにした大きなお盆ぼんを載のせて、バランスを取っていた。顔を真まっ赤かにして、まだ怒っているように見えた。みんなが、何か食べたくて、一斉いっせいにおばさんのほうに行った。しかしハリーは、さらに丹念たんねんにタペストリーを覗のぞき込んでいるシリウスと一いっ緒しょにいた。
「もう何年もこれを見ていなかったな。フィニアス・ナイジェラスがいる……曾そう曾そう祖そ父ふだ。わかるか……ホグワーツの歴代れきだいの校長の中で、一番人望じんぼうがなかった……アラミンタ・メリフルア……母の従姉いとこだ……マグル狩がりを合ごう法ほう化かする魔ま法ほう省しょう令れいを強きょう行こう可か決けつしようとした……親愛しんあいなるおばのエラドーラだ……屋敷やしきしもべ妖よう精せいが年老いて、お茶の盆を運べなくなったら首を刎はねるというわが家の伝統でんとうを打ち立てた……当然、少しでもまともな魔法使いが出ると、勘当かんどうだ。どうやらトンクスはここにいないな。だからクリーチャーはトンクスの命令には従わないんだろう――家族の命令なら何でも従わなければならないはずだから――」
「トンクスと親戚しんせきなの」ハリーは驚おどろいた。
「ああ、そうだ。トンクスの母親、アンドロメダは、わたしの好きな従姉だった」シリウスはタペストリーを入にゅう念ねんに調べながら言った。「いや、アンドロメダも載のっていない。見てごらん――」
シリウスはもう一つの小さい焼け焦こげを指した。ベラトリックスとナルシッサという二つの名前の間にあった。
「アンドロメダのほかの姉妹は載のっている。すばらしい、きちんとした純じゅん血けつ結婚けっこんをしたからね。しかし、アンドロメダはマグル生まれのテッド・トンクスと結婚した。だから――」