その日の午後、ガラス扉とびらの飾かざり棚だなをみんなで片かたづける間、ハリーは努めて尋問のことは考えないようにした。ハリーにとって都合つごうのよいことに、中に入っているものの多くが、埃ほこりっぽい棚から離はなれるのをとてもいやがったため、作業は相当の集中力を必要とした。シリウスは銀の嗅かぎタバコ入れにいやというほど手を噛かまれ、あっという間まに気持の悪い瘡蓋かさぶたができて、手が堅かたい茶色のグローブのようになった。
「大だい丈じょう夫ぶだ」
シリウスは興きょう味み深げに自分の手を調べ、それから杖つえで軽く叩たたいて元の皮ひ膚ふに戻した。
「たぶん『瘡かさ蓋ぶた粉こ』が入っていたんだ」
シリウスはそのタバコ入れを、棚からの廃はい棄き物ぶつを入れる袋に投げ入れた。その直後、ジョージが自分の手を念入ねんいりに布で巻き、すでにドクシーで一いっ杯ぱいになっている自分のポケットにこっそりそれを入れるのを、ハリーは目もく撃げきした。
気持の悪い形をした銀の道具もあった。毛け抜ぬきに肢あしがたくさん生はえたようなもので、摘つまみ上げると、ハリーの腕を蜘く蛛ものようにガサゴソ這はい上がり、刺さそうとした。シリウスが捕つかまえて、分厚ぶあつい本で叩たたきつぶした。本の題は「生粋きっすいの貴族きぞく――魔ま法ほう界かい家か系けい図ず」だった。オルゴールは、ネジを巻くと何やら不吉ふきつなチンチロリンという音を出し、みんな不ふ思し議ぎに力が抜けて眠くなった。ジニーが気づいて、蓋ふたをバタンと閉じるまでそれが続いた。誰も開けることができない重いロケット、古い印いん章しょうがたくさん、それに埃っぽい箱に入った勲くん章しょう。魔法省への貢献こうけんに対して、シリウスの祖そ父ふに贈おくられた勲くん一いっ等とうマーリン勲章だった。
「じいさんが魔法省に、金きん貨かを山ほどくれてやったということさ」
シリウスは勲章を袋に投げ入れながら軽蔑けいべつするように言った。