クリーチャーが何度か部屋に入ってきて、品物を腰布こしぬのの中に隠して持ち去ろうとした。捕まるたびに、ブツブツと恐ろしい悪態あくたいをついた。シリウスがブラック家の家紋かもんが入った大きな金の指輪ゆびわをクリーチャーの手からもぎ取ると、クリーチャーは怒りでわっと泣き出し、啜すすり泣き、しゃくり上げながら部屋を出て行くとき、ハリーが聞いたことがないようなひどい言葉でシリウスを罵ののしった。
「父のものだったんだ」シリウスが指輪ゆびわを袋に投げ入れながら言った。「クリーチャーは父に対して、必ずしも母に対するほど献けん身しん的てきではなかったんだが、それでも、先週あいつが父の古いズボンを抱だき締しめている現場を見た」
ウィーズリーおばさんはそれから数日間、みんなをよく働かせた。客きゃく間まの除染じょせんにはまるまる三日かかった。最後に残ったいやなものの一つ、ブラック家の家か系けい図ずタペストリーは、壁かべから剥はがそうとするあらゆる手段しゅだんに、ことごとく抵抗ていこうした。もう一つはガタガタいう文ふ机づくえだ。ムーディがまだ本部に立ち寄っていないので、中に何が入っているのか、はっきりとはわからなかった。
客間の次は一階のダイニング・ルームで、そこの食しょっ器き棚だなには、大皿ほどもある大きな蜘く蛛もが数匹すうひき隠れているのが見つかったロンはお茶を入れると言って出て行ったきり、一時間半も戻ってこなかった。ブラック家の紋もん章しょうと家訓かくんを書き入れた食器類は、シリウスが全部、無む造ぞう作さに袋に投げ込んだ。黒ずんだ銀の枠わくに入った古い写真類も同じ運命をたどった。写真の主ぬしたちは、自分を覆おおっているガラスが割れるたびに、甲高かんだかい叫さけび声を上げた。