スネイプはこの作業を「大おお掃そう除じ」と呼んだかもしれないが、ハリーは、屋敷やしきに対して戦いを挑いどんでいるという意見だった。屋敷は、クリーチャーに煽あおられて、なかなかいい戦いぶりを見せていた。このしもべ妖よう精せいは、みんなが集まっているところにしょっちゅう現れ、ゴミ袋から何かを持ち出そうとするときのブツブツも、ますます嫌味いやみったらしくなっていた。シリウスは、洋服をくれてやるぞとまで脅おどしたが、クリーチャーはどんよりした目でシリウスを見つめ、「ご主人様はご主人様のお好きなようになさいませ」と言ったあと、背を向けて大声でブツブツ言った。「しかし、ご主人様はクリーチャーめを追い払うことはできません。できませんとも。なぜなら、クリーチャーめはこいつらが何を企たくらんでいるか知っているからです。ええ、そうですとも。ご主人様の闇やみの帝てい王おうに抵抗ていこうする企みです。穢けがれた血と、裏切うらぎり者と、クズどもと……」
この言葉で、シリウスは、ハーマイオニーの抗議こうぎを無む視しして、クリーチャーの腰布こしぬのを後ろから引っつかみ、思いっ切り部屋から放ほうり出した。
一日に何回か玄げん関かんのベルが鳴り、それを合図にシリウスの母親がまた叫さけび出した。そして同じ合図で、ハリーもみんなも訪ほう問もん客きゃくの言葉を盗み聞きしようとした。しかし、チラッと姿を見て、会話の断片だんぺんを盗み聞きするだけで、ウィーズリーおばさんに作業に呼び戻されるので、ほとんど何も収しゅう穫かくがなかった。スネイプはそれから数回、慌あわただしく出入りしたが、ハリーとは、うれしいことに、一度も顔を合わせなかった。「変へん身しん術じゅつ」のマクゴナガル先生の姿も、ハリーはちらりと見かけた。マグルの服とコートを着て、とても奇き妙みょうな姿だった。マクゴナガル先生も忙いそがしそうで、長居ながいはしなかった。ときには訪ほう問もん客きゃくが手伝うこともあった。トンクスが手伝った日の午後は、上じょう階かいのトイレをうろついていた年老いたグールお化ばけを発見した記念すべき午後になった。ルーピンは、シリウスと一いっ緒しょに屋敷やしきに住んでいたが、騎き士し団だんの秘ひ密みつの任務にんむで長いこと家を空あけていた。古い大きな床ゆか置おき時ど計けいに、誰かがそばを通ると太いボルトを発射はっしゃするといういやな癖くせがついたので、それを直すのをルーピンが手伝った。マンダンガスは、ロンが洋よう箪だん笥すから取り出そうとした古い紫むらさきのローブが、ロンを窒息ちっそくさせようとしたところを救ったので、ウィーズリーおばさんの手前、少し名めい誉よ挽ばん回かいした。