「こっちだ、ハリー」おじさんが言った。二人は、黄金のゲートに向かって流れて行く魔法省の役人たちから抜け出した。左のほうに 守衛しゅえい と書かれた案あん内ない板ばんがあり、その下の机に、ピーコックブルーのローブを着た無ぶ精しょうひげの魔法使いが座っていて、二人が近づくのに気づき、「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」を下に置いた。
「外がい来らい者しゃのつき添そいです」ウィーズリーおじさんはハリーのほうを見ながら言った。
「こっちへどうぞ」守衛がつまらなそうに言った。
ハリーが近づくと、守衛は、車のアンテナのように細くてへなへなした、長い金の棒ぼうを取り出し、ハリーの体の前と後ろで上下させた。
「杖つえ」金の棒を下に置き、無ぶ愛あい想そうにそう言うと、守衛は片手かたてを突つき出した。
ハリーは杖をさし出した。守衛はそれを奇き妙みょうな真しん鍮ちゅうの道具にポンと落とした。皿が一つしかない秤はかりのような道具が、震ふるえはじめた。台のところにある切れ目から、細長い羊よう皮ひ紙しがすっと出てきた。守衛はそれをピリリと破り取り、書かれている文字を読み上げた。
「二十八センチ、不ふ死し鳥ちょうの羽は根ねの芯しん、使用期間四年。間違いないか」
「はい」ハリーは緊きん張ちょうして答えた。
「これは保管ほかんする」守衛は羊皮紙の切れ端を小さな真鍮の釘くぎに突き刺さした。「これはそっちに返す」守衛は杖をハリーに突っ返した。
「ありがとうございます」
「ちょっと待て……」守衛がゆっくりと言った。
守衛の目が、ハリーの胸の銀バッジから額ひたいへと走った。
「ありがとう、エリック」
ウィーズリーおじさんはきっぱりそう言うと、ハリーの肩をつかみ、守衛の机から引き離はなして、黄金のゲートに向かう魔法使いや魔女の流れに連れ戻した。