通りすがりに、ハリーは小部屋の入口からこっそり盗み見た。闇祓いたちは、小部屋の壁かべにいろいろと貼はりつけていた。お尋たずね者の人にん相そう書がきやら、家族の写真、贔屓ひいきのクィディッチ・チームのポスター、「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」の切り抜きなどだ。ビルより長いポニーテールの魔法使いが、真紅しんくのローブを着て、ブーツを履はいた両足を机に載のせ、羽は根ねペンに報ほう告こく書しょを口こう述じゅつ筆ひっ記きさせていた。そのちょっと先で、片目かために眼帯がんたいをした魔女が、間ま仕じ切きり壁の上からキングズリー・シャックルボルトに話しかけている。
「おはよう、ウィーズリー」二人が近づくと、キングズリーが何気なにげなく挨あい拶さつした。「君と話したいと思っていたんだが、ちょっとお時間をいただけますかね」
「ああ、ほんのちょっとだけなら」ウィーズリーおじさんが言った。「かなり急いでるのでね」
二人はほとんど互いに知らないような話し方をした。ハリーがキングズリーに挨拶しようと口を開きかけると、おじさんがハリーの足を踏ふんだ。キングズリーのあとについて、二人は小部屋の列に沿そって歩き、一番奥の部屋に行った。
ハリーはちょっとショックを受けた。四し方ほう八はっ方ぽうからシリウスの顔がハリーを見下ろし、目をパチパチさせていたのだ。新聞の切り抜きや古い写真など――ポッター夫妻ふさいの結けっ婚こん式しきで新郎しんろうの付添つきそい役を務めたときの写真まで――壁にびっしり貼ってある。ただ一いっ箇か所しょ、シリウス抜きの空間には、世界地図があり、赤い虫ピンがたくさん刺さされて宝石のように光っていた。
「これだがね」キングズリーは、羊よう皮ひ紙しの束たばをおじさんの手に押しつけながら、きびきびと話しかけた。「過去十二ヵ月間に目もく撃げきされた、空飛ぶマグルの乗り物について、できるだけたくさん情報がほしい。ブラックがいまだに自分の古いオートバイに乗っているかもしれないという情報が入ったのでね」