キングズリーがハリーに特大のウィンクをしながら、小声でつけ加えた。「雑誌ざっしのほうは彼に渡してくれ。おもしろがるだろう」それから普通の声に戻って言った。「それから、ウィーズリー、あまり時間をかけすぎないでくれ。あの『足そく榴りゅう弾だん』の報ほう告こく書しょが遅おくれたせいで、我々の調査が一ヵ月も滞とどこおったのでね」
「私の報告書をよく読めば、正しい言い方は『手しゅ榴りゅう弾だん』だとわかるはずだが」ウィーズリー氏が冷ひややかに言った。「それに、申し訳ないが、オートバイ情報は少し待ってもらいませんとね。いま我々は非常に忙いそがしいので」それからウィーズリー氏は声を落として言った。「七時前にここを出られるかね。モリーがミートボールを作るよ」
おじさんはハリーに合図して、キングズリーの部屋から外に出ると、また別の樫かしの扉とびらを通って別の廊下ろうかへと導みちびいた。そこを左に曲がり、また別の廊下を歩き、右に曲がると、薄暗うすぐらくてとびきりみすぼらしい廊下に出た。そして、最後のどん詰づまりにたどり着いた。左に半開きになった扉があり、中に箒ほうき置き場が見えた。右側の扉に黒ずんだ真しん鍮ちゅうの表ひょう札さつが掛かかっている。 マグル 製せい品ひん不ふ正せい使し用よう取とり締しまり局きょく
ウィーズリー氏のしょぼくれた部屋は、箒置き場より少し狭せまいように見えた。机が二つ押し込まれ、壁際かべぎわには書類で溢あふれ返った棚たなが立ち並んでいる。棚の上も崩くずれ落ちそうなほどの書類の山だ。おかげで、机の周りは身動きする余よ地ちもない。わずかに空あいた壁面へきめんは、ウィーズリー氏が取りつかれている趣味しゅみの証あかしで、自動車のポスターが数枚、そのうちの一枚はエンジンの分ぶん解かい図ず、マグルの子供の本から切り取ったらしい郵便ゆうびん受けのイラスト二枚、プラグの配線はいせんの仕方を示した図、そんなものが貼はりつけてあった。
ウィーズリー氏の「未み処しょ理り」の箱は書類で溢れ、その一番上に座り込んだ古いトースターは、気の滅め入いるようなしゃっくりをしているし、革かわの手袋は勝手に両方の親指をくるくる回して遊んでいた。ウィーズリー家の家族の写真がその箱の隣となりに置かれている。ハリーは、パーシーがそこからいなくなったらしいことに気づいた。