「窓がなくてね」おじさんはすまなそうにそう言いながら、ボマージャケットを脱いで椅子の背に掛けた。「要請ようせいしたんだが、我々には必要ないと思われているらしい。さあ、ハリー、掛けてくれ。パーキンズはまだ来てないようだな」
ハリーは体を押し込むように、パーキンズの机の後ろの椅子に座った。おじさんはキングズリー・シャックルボルトから渡された羊よう皮ひ紙しの束たばをパラパラめくっていた。
「ああ」おじさんは束の中から、「ザ・クィブラー」という雑誌を引っ張り出し、ニヤッと笑った。「なるほど……」おじさんはざっと目を通した。「なるほど、シリウスがこれを読んだらおもしろがるだろうと言っていたが、そのとおりだ――おや、こんどは何だ」
メモ飛行機が開けっぱなしの扉からブーンと入ってきて、しゃっくりトースターの上にハタハタと降おりた。おじさんは紙飛行機を開き、声を出して読んだ。
「『ベスナル・グリーンで三つ目の逆ぎゃく流りゅう公こう衆しゅうトイレが報告されたので、ただちに調査されたし』こうなると度どがすぎるな……」
「逆ぎゃく流りゅうトイレ」
「マグル嫌いの悪ふざけだ」ウィーズリーおじさんが眉根まゆねを寄せた。「先週は二件あった。ウィンブルドンで一件、エレファント・アンド・キャッスルで一件。マグルが水を流そうとレバーを引くと、流れてゆくはずが逆に――まあ、わかるだろう。かわいそうな被ひ害がい者しゃは、助けを求めて呼ぶわけだ、そのなんだ――管かん配ぱい工こうを。たしかマグルはそう呼ぶな――ほら、パイプなんかを修しゅう理りする人だ」
「配はい管かん工こう」
「そのとおり、そう。しかし、当然、呼ばれてもまごまごするだけだ。誰がやっているにせよ、取とっ捕つかまえたいものだ」
「捕まえるのは闇やみ祓ばらいなの」
「いや、いや、闇祓いはこんな小者こものはやらない。普通の魔法警察パトロールの仕事だ――ああ、ハリー、こちらがパーキンズさんだ」
猫背でふわふわした白しら髪が頭あたまの、気の小さそうな年寄り魔法使いが、息を切らして部屋に入ってきたところだった。