「ああ、アーサー」パーキンズはハリーには目もくれず、絶ぜつ望ぼう的てきな声を出した。「よかった。どうするのが一番いいかわからなくて。ここであなたを待つべきかどうかと。たったいま、お宅たくにふくろうを送ったところです。でも、もちろん行き違いで――十分前に緊きん急きゅう通つう達たつが来て――」
「逆流トイレのことなら知っているが」ウィーズリーおじさんが言った。
「いや、いや、トイレの話じゃない。ポッター少年の尋じん問もんですよ――時間と場所が変わって――八時開廷かいていで、場所は下にある古い十号法廷ほうてい――」
「下の古い――でも私が言われたのは――なんたるこった」
ウィーズリーおじさんは時計を見て、短い叫さけび声を上げ、椅子から立ち上がった。
「急げ、ハリー。もう五分前にそこに着いていなきゃならなかった」
ウィーズリーおじさんがわっと部屋を飛び出し、ハリーがそのすぐあとに続いた。パーキンズは、その間、書しょ類るい棚だなにペタンとへばりついていた。
「どうして時間を変えたの」
闇祓いの小部屋の前を矢のように走り過ぎながら、ハリーが息せき切って聞いた。駆かけ抜ける二人を、闇祓いたちが首を突つき出して見ていた。ハリーは内臓ないぞうをそっくりパーキンズの机に置き去りにしてきたような気がした。
「私にはさっぱり。しかし、よかった、ずいぶん早く来ていたから。もし出しゅっ廷ていしなかったら、とんでもない大だい惨さん事じになっていた」
ウィーズリーおじさんは、エレベーターの前で急きゅう停てい止しし、待ち切れないように のボタンを何度も突つついた。
「早く」
エレベーターがガタガタと現れた。二人は急いで乗った。途と中ちゅうで止まるたびに、おじさんはさんざん悪態あくたいをついて、9 のボタンを拳こぶしで叩たたき続けた。